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入場料2530円の本屋が話題 「本を買う」だけでない、一風変わった本屋の「納得の体験価値」

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月21日 6時10分

 では、選ぶところから楽しみたい人にとって、価値を感じる対象は何でしょうか。それは「本屋で過ごす時間そのもの」だと考えられます。

 本屋の中をゆっくりと動きながら本棚を眺め、気になった本を試し読みする時間そのものに楽しさを見いだす。時間に対する価値なので、量的にも、質的にも「ゆっくり過ごせるか」が大切なポイントになります。

 このように整理すると、文喫店内のさまざまな特徴は、すべてひとつの線でつながります。

 こだわり抜かれた本棚も、おいしいコーヒーや煎茶が飲み放題というサービスも、十分すぎるほどに確保されている席数も。全ては「選ぶところから楽しむ」という体験を守り、その体験の価値を最大化するための施策です。

 もちろんこれはこの本屋に限った話ではないでしょう。都内には「ビールが飲める本屋」がありますが、それもビールを味わいながら「本を選ぶところから楽しむ」ための施策といえますし、「複数人で本棚を間借りして運営している本屋」という新しいかたちの本屋は、棚を借りる「棚主」のセレクトを楽しみながら選ぶ体験につながっているのでしょう。

 ペルソナの範囲を絞ったからこそ、一風変わった特徴の本屋が生まれている──。「どんな人の、どんなニーズに応えるか」というサービスを考える上での基本中の基本がいかに大事であるかを再認識させられます。

●余計な心配や気遣いをなくすために「一風変わった」仕組みがある

 さて、次は本屋から少し業態を変えて「一風変わった」ブックカフェを紹介します。下北沢など都内に3店舗を構え「本の読める店」をコンセプトに掲げるブックカフェ「フヅクエ」です。

 店内にも本はありますが、それは店主やスタッフの私物。基本的には自分で持参した本を読むためだけにフヅクエに向かいます。

 「本の読める場所」とはどういうことか。それは「勉強」「仕事」「パソコンの使用」「一緒に訪れた人との会話」、これらが全て「ご遠慮」の対象です。オーダーもコソコソ話のように行いますし、徹底して「静かな店内で思いっきり本を読む」環境が整えられています。

 店内のお客さん全員が黙々と本を読んでいる、静かな空間。これは本好きの私から見てもなかなかに「一風変わった」風景です。

 このようなコンセプトや空間が面白いのは言わずもがなですが、この店を「本の読める場所」たらしめているのは「飲み物や食事をオーダーするごとに席料が安くなる」という料金プランだと私は考えています。

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