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着物の「脱恐竜化」目指す 京都の老舗「小田章」5代目が語る、120年目の事業転換

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月26日 9時0分

 私は2008年に5代目として跡を継いだのですが、就任当初は数十億円近い借り入れがありました。当社のような規模の呉服屋としては、あり得ない負債額です。返し終えた今だからこそ言えますが、毎月7桁は返済していましたから、とにかく月の資金繰りに頭を悩ませていました。当時の売上構成比は呉服が40%、不動産が25%、他の企画が25%、飲食が10%くらいでしたかね。

――バブル期の負債を返し終えて、経営的に変わってきたことはありますか。

 返し終えるまでは飲食業や不動産業など、メインの着物業以外であっても売り上げの立つものは何でも取り入れてビジネスをしていました。2023年4月に完済した後は、その残務処理をしていましたが、その間「当社が本来目指すべきビジネスは何か」「自分が本当に挑戦したかったことは何か」を、ずっと考えていました。今までは「やりたい」と思った事業でも、資金不足で諦めていたこともありました。それが今ようやくいろいろな断捨離をして、本来の業務に立ち返っているところです。

●HYDEとコラボした理由「変わらないために変わり続ける」

――小田章が本来目指すべき道とは何だと考えていますか。

 「ジュサブローきもの」が一世を風靡していた当時、小田章は「戦う呉服屋」といわれていました。旧態依然とした着物業界の中で、さまざまなことに挑戦し続けていたのが父でした。昔ながらのいいものを残すために、守っているだけでは守れないものがあることを、私もよく理解していました。変わらないために変わり続ける姿勢を、父から学んできたのです。

 そしていま注力しているのが、HYDEさんとコラボしているWaRLOCKです。WaRLOCKでは、着物業界が抱える課題にも挑戦したいと考えています。これは5代目の私が一世一代を賭けた「戦う呉服屋」としての小田家が追いかけるべき着物のゴールだと捉えています。

――着物業界の課題を、どう捉えていますか。

 本気で変わろうとしていないのが問題だと思います。もちろん着物を伝統として、そして日本を代表するオートクチュール(高級仕立服)として守っていこうとする動き自体には賛成です。オートクチュールとしての在り方は、当方でもまだ模索していて、当社にその部署も設置しています。

 温故知新は当社の座右の銘です。ただ解決策はその延長線上には存在せず、むしろ、過去の枠を超えたところにあるのではないでしょうか。業界はまだまだ「このまま守りたい」という思いのほうが強く、「このままで何とかなる」と信じているように思います。ただ、私はこのままではうまくいかないと感じています。正しい進化の在り方が問われていると思います。

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