なぜ「ライス残し」で炎上したのか? 家系ラーメン店が抱える深いジレンマ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月23日 6時10分
客が残したラーメンのスープを、そのまま下水にジャーとやるわけにはいかない。豚骨スープなどは冷えて固まると排水管の中で詰まってしまうし、自然環境への悪影響もあるからだ。
グリストラップ(油脂分離阻集器)というものを設置して、そこを通して処理しなくてはいけない。機器なので当然、定期的に専門業者に清掃してもらわなくてはいけない。ただ、これは「義務」ではないので、設置していない店もある。そういう店の場合、スープを固めて産業廃棄物処理業者に引き取ってもらわなくてはいけない。
つまり、いずれにせよ食べ残しのスープが余れば余るほどラーメン店の「コスト」として重くのしかかるのだ。
●「まくりのお供」として登場した無料ライス
こういう事情があるのでラーメン店としては、客にとにかくスープを飲み干してもらいたい。しかし、家系ラーメンはややハードルが高い。店によってバラつきはあるが、基本的に「豚骨しょうゆベース」の濃厚なスープなので、人によっては「しょっぱい」「脂っぽい」と感じて「まくり」が難しい。
そこで「まくりのお供」として登場をしたのが「ライス無料」だ。
家系ラーメンに限らずだが、最近のラーメン店の中には「◯◯ラーメンのおいしい食べ方」のような案内が店の壁に貼られていたり、カウンターに置かれていたりすることが多い。それを見るとだいたい最初は「そのまま食べる」、次に「調味料」「ニンニク」「辛味噌(みそ)」などトッピングで味変。そしてなんやかんやとあって、最後はライスを入れて「雑炊」のようにして食べることを推奨していることが多い。
筆者の地元の家系ラーメンも、「ライス無料」でセルフサービスのスタイルだ。炊飯器には「食べ残しが多い場合は料金を請求します」という警告文があるのだが、一方で店内には至る所に、「シメにライスとともにスープを最後の一滴まで楽しむ」なんて感じのアナウンスがなされている。
このように「どうにかして客にスープを飲み干させよう」というのは、コスト削減を徹底している大手チェーンのほうがもっと露骨だ。
例えば、家系ラーメンの中には「資本系」として区別されている「横浜家系ラーメン町田商店」がある。現在、全国で156店舗(2024年10月時点)を展開しており、店舗によってばらつきはあるが「ライス無料」を大きく打ち出している店が多い。
しかも、それだけではない。「完まく」(完全まくり)と呼ばれる、スープを飲み干した客は「新完まくアプリ」というアプリでスタンプを集められる。これを10個貯めた客には、ラーメン1杯無料のクーポンを提供するほか、1年間トッピングを無料にしている。
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