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「解雇を受け入れたら、お金がもらえる」 解雇規制の緩和、日本で実現するか?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月13日 9時0分

 しかし、そういった一般的な認識とは裏腹に、実はわが国の解雇規制は世界的に見ると「弱い方」だ。OECD諸国で比較した場合、日本は解雇規制が弱い方から11番目。米国より厳しく、欧州諸国より弱い、という位置付けなのである。

 実はわが国において解雇を直接的に制限する法律といえば、労働契約法第16条(解雇権濫用禁止)くらいしか存在しない。つまり「禁止」ではなく、あくまで「制限」なのだ。

労働契約法第16条 

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

 それどころか、民法では「期間の定めのない雇用契約はいつでも解約の申し入れをすることができる」(民法第627条)との規定があるし、労働基準法第20条でも「30日前に予告するか、解雇予告手当を払えば、従業員は解雇できる」と書いてある。つまり「解雇予告手当1カ月分を払えば自由にクビできる」とも読める。

 法律の条文だけを見る限り、わが国において解雇が厳しく規制されているようには見えない。しかし、これは「あくまで法律上は」という建前上の話に過ぎない。実質的に、わが国には法律とは別にもう一つのルールが存在する。それが「判例」、すなわち「裁判で解雇が無効だと判断された事例」である。

 これまで不当解雇にまつわる裁判が数多く行われ、個々のケースについて有効か無効かが判断されてきたという「歴史の積み重ね」がある。それらの判例が法理として現行の「整理解雇の4要件」となっている。

1. 人員整理の必要性

2. 解雇回避努力義務の履行

3. 被解雇者選定の合理性

4. 解雇手続きの妥当性

 ということで実際は、過去の判例とこの4要件により、根拠ある合理的理由がなければ解雇は無効となってしまう。この「解雇が合法的に成立するための要件」認定は極めて厳しく、「実質的に解雇が有効になるケースはごく稀(まれ)である」というのが現状なのだ。

 したがって「日本は解雇規制が厳しい」と言われているのは「解雇を規制する法律がガチガチに固められていて、解雇したら即ペナルティが課せられる」といった意味ではない。「解雇自体はできるが、もしそれが裁判になった場合、解雇無効と判断されるケースがきわめて多いため、実質的には解雇が困難」という表現がより実態を正確に表していると言えるだろう。

●矛盾? なぜ、外資系企業や中小企業ではクビが発生するのか

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