「解雇を受け入れたら、お金がもらえる」 解雇規制の緩和、日本で実現するか?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月13日 9時0分
大企業の決算が発表されるたびに「内部留保が多すぎる! 給料アップに回せ!」と批判する人が現れる。内部留保(利益剰余金)は過去に稼いだ利益の蓄積であり、人件費や税金などを支払った後に残ったものであるから、そこからさらに給料に回すことはできない。そもそもなぜ企業が内部留保を厚くしたがるかといえば、急な景気後退や天災など、不測の事態が発生しても、雇用を守り抜くためのリスクヘッジとして必要だからだ。
すなわち、クビにしやすくなれば必要以上の内部留保は不要となり、事業投資など成長に資する方面に資金を活用できる。
労使双方にここまでのメリットがある解雇規制緩和だが、その一方で「雇用の流動性を高めるためにも解雇をしやすくしよう!」などと提言すれば大きな反発を受けてしまうのは確実。そこで現実的な解決策として最適なのが、まさに今般議論となっている「解雇の金銭解決」制度の導入なのである。
●「解雇の金銭解決」は、誰にどんなメリットがあるのか
現在わが国では、解雇を金銭解決できる制度が存在しない。そのため、会社から不当解雇された人が裁判で争う際には、いくら会社に愛想を尽かしていて復職したくなくても、「解雇は無効だから復職したい」と主張するしか方法がないのだ。
会社側としてもいったん解雇した人物を復職させる気はなく、解雇の撤回もしたくない。ではどうするかといえば、お互いにとってあまり意味のない「復職」をテーマに裁判し、その妥協点として「退職する代わりに解決金を獲得する」という方向に持っていくしかない。実に不自由な状態なのである。
ここで「解雇の金銭解決」を制度として正式に導入できれば、そんな不毛なやりとりをしなくても済む。それも、わざわざゼロから制度構築する必要もない。現行の労働契約法16条に追加で「解雇に際し、使用者が対象労働者の賃金○カ月分以上に相当する金銭を支払った際は、その解雇は客観的な合理性を有し、社会通念上相当であるとみなす」といった一文を入れるだけでいいはずだ。
解雇の金銭解決制度の導入は、裁判で要する余計な時間と弁護士費用、そして肉体的&精神的エネルギーなど全てを省略できる。労働者側にも企業側にもメリットのある制度といえるのではないだろうか。
(新田龍、働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ベリーベスト法律事務所の松下 啓一弁護士が裁判員裁判で“無罪判決”を獲得
PR TIMES / 2024年11月11日 11時45分
-
再雇用後の待遇格差容認で敗訴 JR九州嘱託社員、福岡地裁
共同通信 / 2024年11月8日 17時46分
-
希望退職の“キラキラネーム化”──黒字なのに人員整理に向かう企業の「ある事情」
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月7日 9時20分
-
アディーレ法律事務所が不当解雇に関する新プランの提供を開始
PR TIMES / 2024年11月1日 16時15分
-
「セクハラ被害で起業を諦める」論争、問題点はどこか? 深刻な二次被害も
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月15日 7時20分
ランキング
-
1「虫混入報告」チロルチョコとシャトレーゼの明暗 企業ブランドを守るために企業ができること
東洋経済オンライン / 2024年11月13日 9時40分
-
2アダルトサイト誘導を謝罪 米玩具大手マテル、箱に誤記載
共同通信 / 2024年11月13日 7時16分
-
3日産9000人削減の衝撃 「技術自慢の会社」ほど戦略で大コケする理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月13日 6時15分
-
4オフィス内に「公園の遊具」? コクヨが狙うは「出社回帰」の波
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月13日 6時40分
-
5トラブル時の「新幹線ホテル」実際に泊まってみた 車内で何人が寝ているのか、快適に眠れるか
東洋経済オンライン / 2024年11月12日 6時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください