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「解雇を受け入れたら、お金がもらえる」 解雇規制の緩和、日本で実現するか?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月13日 9時0分

 「解雇したら訴えられ、解決金支払いやレピュテーション低下などのトラブルになる」ことがほぼ確定している場合、雇用側にとって採用はリスク要因となり、高い報酬を設定すること自体を躊躇(ちゅうちょ)してしまうことにもなりかねない。

 そうなると、必然的に「絶対に間違いない人しか採用しない」こととなり、人手不足にもかかわらず採用ハードルは上げざるを得なくなる。具体的には、精緻な書類(履歴書、職務経歴書、エントリーシートなど)を書かせ、適性試験を受けさせ、何度も面接を経る過程の中で「当社のメンバーとして迎え入れるに相応しい人物か」を精査するわけだが、明らかに応募者にとっても選考側にとっても負担である。もちろん、人材流動性は低くなる一方だ。

 一方で解雇となっても法廷闘争まで至ることなく、「お互い相性が良くなかったね」程度でお別れできれば、必然的に入社時の選考ハードルは下がり、人材流動性は高まることだろう。そうなれば、一時的かもしれないが成長産業に優秀人材が集まりやすくなり、経済成長も期待できる。

 また、日本企業で給料が上がりにくい一因は「人員ニーズがなくなってもクビにできず、社内で雇い続けないといけない」ところにある。逆に考えれば「ニーズがなくなったらクビにできるので、ニーズが大きいうちは給料を上げられる」、すなわち従業員の給料アップにつながるのだ。

 こんな主張をすると、「社員をクビにするような悪徳経営者が、給料を上げようなんて考えるわけがないだろ!」と反論する方が出てくるが、それはあまりに経営者を敵視しすぎ、経営を単純に考えすぎだろう。

 今やどの業界も人手不足であり、事業に貢献できる人材は世界規模で獲得競争の渦中にある。競合他社より給料を上げるだけで優秀人材が来てくれるなら、喜んで給料を弾むと考える経営者は少なくない。

 ただ先述のとおり、現行ではいったんメンバーとして迎え入れた以上、その後「長期的に雇い続けないといけない」プレッシャーがあるため、給料を上げる制約条件になっているだけなのだ。

 そして正規雇用と非正規雇用における待遇格差問題も、突き詰めれば「クビにしやすいか否か」に帰結する。クビにしやすくなれば、もはや待遇差どころか「身分格差」となっている非正規雇用問題も解消するだろう。

 さらには、クビにできやすくなれば不幸な「就職氷河期」もなくなるはずだ。過去記事でも言及したとおり、就職氷河期が生まれた原因は、景気後退期でも既存社員を簡単にクビにできなかったため、雇用調整手段として「新卒採用を極端に絞り込む」という手段を採ってしまったからだ(過去記事:「どうすれば就職氷河期を回避できた? 今も残る『元凶』」、「結局、就職氷河期とは何だったのか? その背景と今に続く深い傷跡」)。

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