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絶滅寸前の「夜行列車」に復活の兆し、インバウンドの追い風で加速か?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月26日 9時10分

絶滅寸前の「夜行列車」に復活の兆し、インバウンドの追い風で加速か?

「夜行列車」に復活の兆し、なぜ?

 減便が続いた「夜行列車」が息を吹き返すかもしれない。

 この夏、臨時列車として運行した夜行特急「アルプス」に注目が集まった。かつて“山男御用達”として人気だった夜行急行列車「アルプス」の復活だと話題になったためだ。寝台車はなく座席のみ。特急電車を使うから、ちゃんとリクライニングシートだ。現代風にいえば、高速夜行バスの電車版である。

 新宿駅23時56分発、白馬駅翌朝6時22分着。途中で立川駅、八王子駅、松本駅、信濃大町駅に停車する。下り列車のみで上り新宿行きは設定されない。臨時列車だから運行日数は少なく、新宿発基準で7月12日、8月9日、9月13日、9月20日(いずれも金曜日)の4本のみ。全車指定席の特急列車に格上げされ、実質的な値上げにもなったけれども、ほぼ満席の仕上がりだったという。

 成功の証として特急「アルプス」は、秋の臨時列車としても追加された。またも金曜日の10月11日、11月1日が設定され、本稿執筆時の10月24日現在、11月1日出発便はグリーン車が満席、普通車も残席わずかの△マークが付いていた。出発日までには満席になるだろう。

 ただし、冬の臨時列車(12~2月)のリストにはない。これが特急「アルプス」の性格を表している。設定された日は全て三連休前日の金曜日だ。つまり、年末年始の多客期に走らせる臨時便ではなく、明らかにレジャー目的の旅行客を対象としている。12月には月曜休日の三連休がないから設定されないとしても、1月10日、2月21日は追加されそうな気がする。

 この特急「アルプス」は、夜行列車復活のきっかけになるかもしれない。その根拠を披露する前に、なぜ急行アルプスが消えてしまったか、その理由を登山ブームの変遷と合わせて推察してみよう。

●山岳ブームと「アルプス」の歴史

 戦後間もない1948年(昭和23年)7月、新宿~松本間に臨時夜行準急列車が設定された。この列車が翌年に定期列車の準急「アルプス」となった。当時は鉄道需要が多く、日中の移動を補完する役割だったと思われる。

 ところが1950年代に世界で8000メートル級の初登頂が続くと、日本でも登山ブームが起きた。山小屋やテントで宿泊する登山家も多い。そんな登山家にとって、夜行列車は1泊の宿泊費を浮かせられる上に、早朝から登山に挑める便利な交通手段だ。1957年には「アルプス」に加えて臨時夜行準急も設定された。

 その後「アルプス」は客車からディーゼルカーとなり、急行に格上げされ、日中も走るようになった。1964年に登山家の深田久弥氏が自らの基準でまとめた随筆集『日本百名山』(新潮社)が話題となった。ここから始まる登山ブームも、「アルプス」をはじめ全国で走っていた夜行列車が支えた。

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