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絶滅寸前の「夜行列車」に復活の兆し、インバウンドの追い風で加速か?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月26日 9時10分

 JR東日本長野支社も管内の観光列車「おいこっと」「HIGH RAIL 1375」「リゾートビューふるさと」と連携するプランを用意した。そこで設定した臨時列車が特急「アルプス」、特急「はくば」、特急「諏訪湖花火大会号」、「ぐるっと信州号」、新宿発「国鉄型185系南小谷行き」だった。特急「アルプス」は東京から長野へ送客する目玉列車といえる。

 終着駅のある白馬村の躍進も交通需要を増やしている。白馬エリアは「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート」を目指して、2018年に絶景テラス&カフェ「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」を開業するなど、10年間にグリーンシーズン向けの施設を展開した。現在はスキーシーズンを上回る集客数だ。訪日客も多いという。白馬村、大町市、小谷村の2023年の夏季観光客数は約266万人。コロナ禍前の2019年に比べて162%の集客となった。

 その結果、白馬はホテルが取りにくい場所になっている。そこに特急「アルプス」がはまった。夜行日帰り、あるいは夜行+1泊で楽しもうという需要があった。そこにかつての過酷な登山ブームはない。「山ガール」ブームで女性層が増えて、漫画からアニメにもなった『ゆるキャン△』のような「手軽な山遊び」の流行もあるようだ。

 特急「アルプス」には多くの示唆がある。まずは特急化だ。実質的な値上げに成功した。「ムーンライト信州」の指定席券は530円。特急「アルプス」の特急券は3150円だ。キャンセルした場合、払い戻し手数料340円を引いても、2810円が戻ってくる。出発日前日から発車時刻までは手数料を3割も取られるけれど、それでも2200円が戻ってくる。これは見過ごせない金額だ。予定が変わっても積極的に払い戻す動機になるし、転売屋の売れ残りリスクも高まる。

 「値上げしても満席」で、しかも「グリーン車から先に満席になっている」点も注目だ。単価の高い席が売れている。つまり、有効時間帯の夜行列車にはそれだけの価値があることは明らかになった。乗車券と特急券の総額で見ると、特急「アルプス」の新宿~白馬間は普通席で8650円。グリーン席で1万2310円だ。

 特急ではなく、夜行急行「アルプス」として復活させた場合、普通席で6820円。急行料金は自由席だから、指定席に乗る場合は指定席料金530円を加算して7350円になったはず。ちなみに、新宿~白馬町間の夜行バス・アルピコ交通「5551便」はバスタ新宿23時05分発、白馬町停留所5時39分着、運賃は7500円だ。11月1日出発分は満席だ。つまり急行アルプスの料金でも、夜行バスとじゅうぶんに競争できた。そこにワンランク上の特急を設定した。

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