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絶滅寸前の「夜行列車」に復活の兆し、インバウンドの追い風で加速か?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月26日 9時10分

 1980年代になると、若年層の登山者は減り、若い頃に登山を愛した50代、60代のリターン登山家が増えていく。1986年には昼間の急行「アルプス」が特急「あずさ」に組み入れられて、「アルプス」は再び“夜行列車専門”になる。車両は特急形電車となり、古いけれどもリクライニングシートで快適になった。

 こうして「アルプス」を含めた夜行急行列車、夜行快速列車は登山家御用達となった。しかし、登山者の高齢化によって夜行列車は敬遠されていく。1999年には高尾山薬王院有喜寺で「健康登山」が提唱された。高齢者の登山者は増えたけれども、夜行急行で出かける人は減る。2002年に夜行急行「アルプス」は廃止となり、代わって臨時快速「ムーンライト信州」が走り始めた。

 夜行列車需要を支えた乗客は「青春18きっぷ」のユーザーたちだった。ムーンライト信州は私も何度か利用し、人気は高かったと思う。しかし2018年に車両の引退を理由として運行を終了する。筆者の見立てでは営業面に問題があったように感じた。普通列車のため青春18きっぷで乗れる。座席指定券が530円と安かったので、収入が少ない。そして、車掌が「満席」と放送しても空席が目立った。私の隣の席も終着駅まで空席だった。

 その理由も客単価の低さが関係している。実際には1人しか乗らないのに、2人分の指定席を買ってゆったり過ごす人がいる。当然ながら乗車券は1人分だけなので収入は少ない。もちろんこれは規則違反だ。安い指定席はキャンセルしても手数料を引くと戻ってくるお金が少ない。そうなると手続きの手間を嫌ってキャンセルしない人がいる。指定席が安いということは、オークションで転売する者たちにとってもリスクが少ないことになる。売れなかったとしても、損失が少ないからである。

 車両が老朽化しているなら、稼働していない特急車両を使ってもよかったはずだ。「ムーンライト信州」が消えた本当の理由は、採算の悪化だと私は思った。

●「アルプス」特急化は実証実験的だ

 特急「アルプス」を運行するきっかけは、2024年の「夏の信州観光キャンペーン」だ。JR東日本長野支社と長野県観光スポーツ部が連携した観光キャンペーンで「Go Nature. Go Nagano」をスローガンとし、長野県全体の観光施設を総動員して、「アクティビティ」「食体験」「自然と文化」をテーマに集客イベントを用意した。開催期間は7月1日~9月30日だった。

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