鉄道事業の分社化は小林一三イズムの終焉か 南海電鉄の新たな一手
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月9日 8時10分
阪急電鉄と阪神電鉄は、阪神間を結ぶ鉄道として競争関係にあった。2社を経営統合せず持株会社の子会社にしたことで、互いの独立と競争関係を維持している。もっとも鉄道会社の使命はグループ企業とともに沿線の発展に寄与することであり、運賃や速度で客を奪い合う時代は終wa
りつつあった。
このように地方の鉄道も大手私鉄も、もとは経営グループのリーダー格だった鉄道事業を子会社化している。そこには共通点がある。鉄道の役割が「発展」から「安定」に変わったことだ。鉄道を持続的に維持するためには、子会社となって鉄道事業に専念してもらったほうがいい。
●多角経営で鉄道会社の利益を最大化
鉄道事業を発展させるために、不動産事業や百貨店、流通、レジャー事業を行う。郊外の沿線に家を建てれば、都心へ向かう通勤客が増える。都心のターミナルに百貨店をつくれば、休日に家族で電車に乗ってもらえる。郊外に学校を誘致すれば、通勤客とは逆方向でガラ空きの電車に通学客が乗る。沿線に遊園地や劇場、温泉施設などのレジャー施設をつくるほど、鉄道の乗客は増える。
多角経営で鉄道会社の利益を最大化する。この方式を最初に始めた人物が小林一三だ。阪急グループの創始者として歴史に残る。この経営手法を民間鉄道会社が取り入れて、大手私鉄が企業グループを形成していく。この経営手法を「小林イズム」「小林一三イズム」という。その中でも東急グループは、先にまちづくり計画を立てて安価な土地を購入しておき、あとで鉄道を通して不動産の価値を高めて利益を最大化した。
鉄道と沿線がともに発展していくためには鉄道路線を延伸し、沿線に新たな土地を得る必要がある。しかし鉄道の延伸には限界がある。そうなると沿線の発展は飽和して、沿線で商いをする子会社は成長できなくなる。そこで鉄道沿線を離れた場所で発展していく。これが、南海電鉄や東急電鉄の鉄道事業分社化に結びつく。
東急グループは沿線に有力な観光地を持たない。そこで不動産事業が古くから伊豆や箱根、北海道などに進出した。鉄道の延伸計画も終了し、グループ会社は独自の発展を遂げている。もちろん拠点である渋谷の再開発も重要だけれども、東横線や田園都市線の集客とはリンクしない。不動産関連事業に注力し、鉄道は安定、維持に注力する。そのための鉄道分社化だった。
相模鉄道も2009年に持株会社に移行して相鉄ホールディングスを設立し、鉄道や不動産事業を子会社化した。なかでも相鉄ホテルマネジメントは積極的に沿線外へ展開し、ビジネスホテルの「相鉄フレッサイン」を全国展開する一方、2014年にサンルートホテルを買収するなど、鉄道とは非連携の発展を遂げている。
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