「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月26日 8時10分
吉野家は、2000年度のCCCはマイナスでした。CCCの数字が小さいもしくはマイナスということは、お金がどんどん入ってきていることを示しています。支払いがかなり先で、支払いまでの間もずっと売れ続けており、買掛金を払うまでのサイクルが長いことを示しています。店舗で牛丼がどんどんと売れ、たくさんお金が入って来ている状態です。この時期、ゼンショーHDも松屋もマイナスであったことから、とても効率の良いビジネスだったことが見て取れます。
価格戦争が始まった当初、営業利益はもちろん、CCCという観点で見ても非常に楽な時代であったことが分かります。資金繰りが楽であれば、運転資金を借りる必要がなく、レバレッジを効かせた積極的な投資が可能になります。積極的に成長のためにお金を使えるため、企業にとっては非常にうれしい状態です。
●「低価格なのに高収益」が、BSEで一転
この数字に大きな変化をもたらしたのが、2003年末に発生した狂牛病(以下、BSE)でした。米国でBSE感染が確認された牛が見つかったことで、世界的に牛肉の安全性への懸念が広がるとともに、日本政府も米国産牛肉の輸入を全面的に停止したのです。
当然のことながら、これは日本の牛丼ビジネスにも大きな影響を与えました。BSEの影響で、2004年度の吉野家HD、および吉野家単体の営業利益率はそれぞれ-1.0%と-1.9%と、これまでの好調ぶりから一転、マイナスとなりました。松屋フーズHDもマイナスにこそならなかったものの、4.9%と大きく数字を落としました。
このタイミングで唯一数字を落とさなかったのが、すき家のゼンショーHDです。事業を多角化していたこともあったためか、2004年度の営業利益率は3.4%と、BSE以前とそこまで大きく変化することはありませんでした。牛丼3社のなかで、一番痛手が少なく、うまくBSEの時期を乗り切ったといえるかもしれません。
BSEは営業利益だけでなく、CCCにも大きな影響を与えました。2000年~04年の価格戦争の際は好調だったCCCが、BSEを機に徐々に悪化し始めました。吉野家HDはビジネス形態が変わったため、一概にBSEのみの影響とは言い切れませんが、牛丼ビジネスのみの松屋フーズHDのCCCも悪化していることから、やはりBSEは牛丼業界にとって大きな影響を及ぼしたといって良いでしょう。
●BSE後頭一つ抜けたのが、すき家のゼンショー
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