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「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月26日 8時10分

 加えて、資本市場との付き合い方にも各社の違いが表れていました。ゼンショーHDは2007年と2014年に増資を行っており、直近の2023年にも増資をしています。一方の吉野家HDは、筆頭株主の伊藤忠商事が保有していた全株式を買い取りました。その後、2015年に増資をするにとどまっています。

 ここからも、調達した資金を積極的に投資し、事業を成長させようというゼンショーHDのマインドが感じられ、吉野家や松屋などとは明らかに違うことが見て取れます。また、実際にゼンショーHDはきちんと必要な資金を集められていることから、3社のなかで投資家から最も期待されていると感じます。

 このようにして、価格戦争勃発当初は好調だった吉野家が減速し、BSEをうまく乗り切ったすき家の一強状態となったのです。

●「長期的」な目線が“あだ”に

 さまざまな時代背景を見ながら、牛丼3社の牛丼並盛の価格や、財務諸表を分析してきました。これまでお伝えした通り、牛丼3社の環境を一番大きく変えたのは、BSEだったと感じます。

 BSEによって、特に影響を受けたのが吉野家でした。BSE発生当時、吉野家は他国の牛肉を仕入れるということを基本的に行わず、「これまでの牛丼の味にこだわる」ことを貫きました。当時この姿勢は世間から支持されていましたし、かくいう私も吉野家の牛丼が好きで、その判断を見てうれしく感じたのを覚えています。

 一方で、すき家と松屋は、オーストラリア産の牛肉を取り入れ、味に変更を加えるなど、オペレーションを柔軟に変更して対応しました。

 吉野家は「米国産の牛肉を使い味を維持する」という判断をしたために、割高な米国産牛肉を使わざるを得なくなり、コストが高止まりしたことで価格競争という面で苦しくなったと考えられます。

 BSE発生当時の吉野家のプレスリリースには、米国産以外の牛肉に対応するためには、たれの調合を変える必要があること、そして「長期的な」視点に立ってみると、米国産の牛肉を使い続けて、これまでの味にこだわるのが良いと判断したということが書かれています。

 しかし、この「長期的」という目線が“あだ”となったと感じます。すき家や松屋のように、オーストラリア産の牛肉で何とか同じ味が出せないか研究していたほうが、「長期的に」見ると良かったのではと感じてしまいますし、結果的にそれが今の財務状況を表しています。

 同様の事例は、他の業界にもありました。東日本大震災の際、タイヤなどの製造に不可欠な「カーボンブラック」をつくっていた企業の東北工場が被災し、生産ができなくなってしまったのです。この影響で、タイヤメーカーは安い中国製のカーボンブラックを使わざるを得なくなりました。

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