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「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月26日 8時10分

 それまでは、日本企業との間には粒子設計に圧倒的な差があるため「使い物にならない」という声や、「調整の手間がかかるのでコスト的に一緒になってしまう」という意見があったそうです。しかし、どうにか使えるようにタイヤメーカー側が努力したところ、最終的にこれまでの製造に一工程加えることで、コストを下げつつほぼ同じ性能が出せるようになったのです。

 結果的に、被災した工場が立て直され、無事元通りカーボンブラックが生産できるようになったものの、「安いほうでできる」ことが分かった一部の顧客は、戻りきらない状況が続きました。

●こだわりポイントをどこに置くかの判断が重要

 このように、時代や環境に合わせられるかどうかで、企業の将来は大きく変わってきます。個人的には「持つべきこだわりポイントをどこに置くか」が大事だと感じます。

 今回紹介した牛丼3社の中で、特に大事なのはお客さんに選ばれる味と価格であったと考えています。BSEが発生した当時、吉野家の「米国産にこだわる」という姿勢は評価されていましたが、それまでの手法に固執したがために、BSE以前のような収益力を取り戻すことができなくなり、結果として味やサービス、価格の面で劣後するという残念な結果になったと思います。

 オーストラリア産牛肉の輸入を早期に決め、価格でも大きく勝負に出たゼンショーHDがいまの業績につながっていることを考えると、こだわるポイントを間違えると、長期的に企業価値に大きく差がついてしまうといえるのではないでしょうか。

 時代に合わせた経営が重要であることは間違いありません。牛丼業界において、これまでは味と価格の両面で経営力が試され、その結果が如実に数字に現れたと感じます。しかし、今後は「人」が企業の行く末を大きく左右すると考えています。

 いくら店舗があっても、そこで働く人がいなければオペレーションを回すことはできません。最近も無理なオペレーションを組んで働かせていたことが取りざたされていましたが、今後はより多くの人が「この企業で働いてみたい」と思えるような環境をつくれるかが肝となるでしょう。

 私は、そうした環境づくりが、企業間の新たな「競争の軸」となってくると考えています。そして、それに対処できるか否かで、将来の順位が入れ替わるかもしれません。これからの時代に合わせた経営ができる企業はどこなのか、これからも価格とともに注視していきたいと思います。

(草刈貴弘)

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