プロレスのスーパースター中邑真輔に聞く 米WWEと日本の「ブランディング」の違い
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月31日 10時16分
ただ中邑選手は「ABEMAやプロレスリング・ノアにも、多くの人に見てもらえるコンテンツを作るポテンシャルの大きさがある」と話す。
「携帯1つで大会を見られますから、(多くの人に見てもらう)きっかけさえあればという感じですね。あとはブランディングが重要だと思います。どういう風にプロレス自体を見られたいのか。それを考えてブランディングすることによって、もっと多くの方に見てもらえるようになるんじゃないかと思います」
WWEは自社コンテンツを販売する強いビジネスモデルを有していることに加え、徹底的にブランディング戦略を考え、実行しているという。
「日本のテレビ局がそうだったように、米国のテレビ局でも1990年代には(暴力的な)際どい演出も多かった。それがターゲットを子どもや家族、つまりファミリー向けに設定して、多くの人が見られるものに変えてきたんです。そして『WWEを見ることがスタンダードだよ』というプロモーションの仕方をしてきたと思います」
●中邑真輔「まだまだ多くのファンを獲得できる」 その方法とは?
中邑選手は日本の視聴環境の課題として「日本ではエンターテインメントが細分化している状況と(そのエンタメの)一つ一つのパイもそれほど大きいわけではない」ことを挙げた。
エンタメが細分化されることによって、制作側の見せ方が「コアなファン向け」になる傾向もある。例えばプロレスでいうと、日本には専門雑誌が多くあり、ファン歴の長い「コアファン」が業界を支えている状況だ。一方ファンでない層からはある意味でマニアックに見える部分もあり、ライトなファンが入りにくくなってしまう傾向も同時に存在してしまう。
中邑選手は、WWEの戦略成功の要因の一つに「観客に見てもらう」ためのブランディング戦略があるのではないかと話す。
先述した通り、WWEではターゲットを“家族全員”に設定し、見せ方の検討に力を入れている。米国のテレビ放送におけるレギュレーション(規制)にも厳密に対応しているのだ。
米国のテレビ番組では、どの年齢層に適切な内容なのかを評価したレーティングが付けられている。子どもも視聴することを前提とした規制であり、暴力や過度な性的表現、過激な言動が制限されるのだ。そのため流血などのトラブルが発生した場合、そのまま試合を放送していいのか、中断するのかも状況によって調整する。この背景にはWWEがスポンサーとの関係を維持したい狙いもあり、細部への配慮に余念がない。子どもや家族層も重要な視聴者としてターゲットにしているため、徹底的なブランディングを実行しているのだ。このような管理体制は、WWEの長期的なブランドイメージを保つための重要な要素といえる。
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