なぜ、最低賃金ニュースは“経営者の悲鳴”ばかり? 労働者の声が消えるオトナの事情
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月8日 6時10分
「最低賃金を支払えない」と経営者は訴えるが……
新年早々、お屠蘇(おとそ)気分が吹っ飛ぶような暗いニュースが注目を集めた。
2024年11月、最低賃金が896円から980円へと引き上げられた徳島県で、零細企業経営者が「これだけの給料を払い続けられるほど利益はない。今のままでは人は雇えない」(時事通信 2025年1月5日)と悲鳴を上げているというのだ。
これを受けてSNSでは「最低賃金を引き上げるなら、中小企業が倒産しないように手厚い補助をすべきだ」「石破政権は1500円を目指すとか言っているけれど、やはり引き上げ幅は慎重になるべきだ」と議論が盛り上がっている。
どのような形にしろ、最低賃金に関心が集まることは喜ばしいことだ。しかし、今回のようなニュースを見るたび不思議に思うことがある。
なぜマスコミはこのテーマになると、「経営者側の苦境」ばかりをことさら強調するのか、ということだ。
いや、もちろん時給84円アップが耐え切れず、廃業に追い込まれそうな経営者には同情する。それで無職になって、次の仕事を探さなくてはいけない人たちも気の毒だ。しかし、そのような人たちと比べ物にならないほどの苦境に追いやられて、悲鳴どころか貧しさで疲弊して声を上げられない人たちもいる。徳島県内の「低賃金労働者」だ。
最低賃金で働くのはシングルマザーなどの一人親が多い傾向があり、子どもの貧困などの問題にもダイレクトに影響を及ぼす。深刻度でいえば、こういう人たちの声もしっかり取り上げるべきだが、今回のニュースのように、会社が潰れそう、経営が苦しいと訴える経営者の声ばかりにフォーカスが当たっていることに、どうしてもモヤモヤしてしまうのだ。
●なぜ徳島県は最低賃金を大幅に引き上げたのか
そもそもなぜ、徳島県はここまで大幅な最低賃金引き上げに踏み切ったのか。理由の一つは、労働者側が文句を言わないことをいいことに、常軌を逸した低賃金で過酷な労働を強いる事業者がいるからだ。
「令和6年最低賃金に関する基礎調査結果」によると、徳島県が1624事業者を対象に調査したところ、これまでの最低賃金896円さえも払われていない労働者が1230人いた。
「低賃金労働者の一覧」には、耳を疑うような「搾取」が明らかになっている。例えば、10~29人規模の製造業で働く60歳女性の収入を時給換算すると794円だった。9人以下の宿泊、飲食業で働く55歳の女性は、なんと時給596円だった。
この記事に関連するニュース
-
石破政権の目玉政策「最低賃金1500円以上」...企業の半数「実現不可能」 財界も賛否両論真っ二つの事態
J-CASTニュース / 2025年1月7日 18時28分
-
「給料払い続けられない」=経営者が悲鳴、補助金に不備も―最低賃金、大幅上げの徳島
時事通信 / 2025年1月4日 15時25分
-
最低賃金上げ、地方創生切り札に=政府、「1500円」前のめり―ペース加速で地域経済混乱も
時事通信 / 2025年1月4日 14時33分
-
焦点:異論根強い「高い最低賃金目標」、政権浮揚の突破口にも
ロイター / 2024年12月20日 18時7分
-
石破政権目標の「最低賃金1500円」、本当に実現できるのか? アルバイトや企業の本音は
Finasee / 2024年12月13日 18時0分
ランキング
-
1低価格の理想郷「ロピア」は、日本版コストコ!? ヨーカドー跡地に続々オープン 実際に行って分かった強さの秘密
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月9日 5時55分
-
2「ヒートショック溺死」は愛媛、鹿児島、静岡に多い理由…「暖房をつけても足元が冷える部屋」を放置してはいけない
プレジデントオンライン / 2025年1月9日 18時15分
-
3「ディーゼルエンジン搭載車」は「天ぷら油」で走行できるって本当!? 「仕組み」と「可能性」を徹底解説!
ファイナンシャルフィールド / 2025年1月9日 8時30分
-
4セブン&アイ、24年度中に低収益事業や資産の整理を完了へ
ロイター / 2025年1月9日 16時39分
-
5みずほ銀、長プラを年2.00%に引き上げ 15年7カ月ぶりの高水準
ロイター / 2025年1月9日 14時38分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください