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なぜ、最低賃金ニュースは“経営者の悲鳴”ばかり? 労働者の声が消えるオトナの事情

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月8日 6時10分

 これだけ物価上昇が騒がれ、値上げが続く今の日本社会でも、このような常軌を逸した低賃金労働を強いられている人々がまだたくさんいる。「弱者の味方」を標榜するマスコミが取り上げるべきは、このような人々の「こんな安い給料じゃ生けていけません」という悲鳴であることは言うまでもない。時給84円アップで廃業に追い込まれる経営者の悲鳴を取り上げることも必要だが、それと同じくらいの熱量でこちらも世に伝えるべきではないのか。

 ……という話をすると、「そういう大変な人もいるだろうが、ほんの一握りに過ぎないんだから騒ぎすぎだ」といったご指摘があるだろう。

 そう、筆者が指摘したいこともまさしくそれなのだ。「ほんの一握りの人々が抱える問題を、全体のように語るのはいかがなものか」というのなら、「経営者が悲鳴!」的なニュースほど不自然なものはない。

 「最低賃金引き上げで廃業に追い込まれる経営者」というのは、実は「最低賃金以下で働く労働者」と同じく、ほんの一握りに過ぎないからだ。

●マスコミが「経営者の悲鳴」だけ報じるワケ

 先ほど徳島県内で、時給896円以下で働いているのは1230人と述べた。実はこれは調査した労働者のうち1.17%に過ぎない。超マイノリティーだ。

 では、「多数派」はどんな労働者か。まず多いのは最低賃金スレスレで3520人。アルバイトやパートの時給は、最低賃金を基準に設定されるので当然だ。しかし、その他に多いところを見ると意外なことが分かる。

 時給980円で働いている労働者は669人、時給990円は482人、時給1000円にはなんと6411人もいる。つまり、最低賃金を軽く上回る給料を労働者にしっかりと払っている経営者も、徳島県内にはたくさんいるということだ。

 こういうデータを見れば、「最低賃金引き上げで中小企業が悲鳴!」というニュースが、実は「ほんの一握りの人」の声だけを集めてつくられたものだと分かるだろう。

 最低賃金が896円から980円に引き上げられたことで「ええ、84円のアップ? もうダメだ、人を雇えないから廃業するしかない」という経営者は確かに気の毒である。一方で、それが徳島県内の中小企業の多数派の声かというと、そうではない。

 マスコミの皆さんは「少数でも苦しんでいる人の声を伝えるのがわれわれの仕事だ」というだろうが、ならば先ほど述べたように、低賃金労働者を無視するのは道理に合わない。

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