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なぜフジテレビは失敗し、アイリスオーヤマは成功したのか 危機対応で見えた「会社の本性」

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月22日 6時10分

 そんな「ユーザーイン発想」が組織の根幹にあることが分かるのが、毎週月曜日に開催される新商品開発会議だ。ニュースや経済番組でよく取り上げられるのでご覧になった方も多いだろうが、この会議には商品にかかわる全部門が集結し、経営トップとともに議論をして、その場で商品化が即決される。

 どんなに生活者になりきってアイデアが生まれたところで、「課長の承認を得て次は部内の会議でうまく調整して」みたいなプロセスを重ねていけばいくほど「組織の論理」で肉付けされていってしまう。あの名物会議は、「ユーザーイン発想」から逆算して生まれたものなのだ。

 実はこの「生活者になりきる」ということは、企業危機管理においても非常に重要だ。マニュアルや前例に縛られることなく、組織外の世界、つまり社会が本当に望んでいる対応に気付けるからだ。これは危機の当事者になるとかなり難しい。

 筆者もいろんな企業の危機対応を見てきたが、「お客さま第一主義」を掲げる企業が、製品に問題があって消費者に実害が出ているにもかかわらず、組織防御丸出しの対応をしてしまう。そこには「悪意」はない。みんな真面目で忠誠心のある組織人だからこそ、組織を守ることを優先してしまうのだ。

 そういう人たちに「もっと一般の生活者になりきってください」とアドバイスをしながら対応の軌道修正を促し、世間の常識とかけ離れた炎上会見を回避するのが、われわれの仕事だ。

 しかし、アイリスオーヤマの場合は平時から「生活者になりきる」ことが徹底されているので、危機が発生しても、自分たちの力で社会がどのような「幕引き」を求めているのかを見つけ出せるのだ。

 例えば、今回の吉沢さんのケースは先ほども申し上げたように、企業危機管理のセオリー的にはCM停止などが妥当である。しかし「生活者になりきってわが身に起きたこととして考える」とちょっと違う見方になる。

 想像していただきたい。あなたのマンションの隣室に、映画やドラマで活躍をする人気俳優が住んでいた。その彼がある夜、酔って家に入って勝手にトイレを使っていた。いくら人気俳優でもやっていることは犯罪だし、何より怖い。警察に通報するのは当然だ。

 しかし後日、本人が反省して謝罪をし、引っ越しもするとなったら、皆さんはその人の俳優人生を奪うまでのペナルティーや、仕事を奪うなどの「制裁」を望むだろうか。

 もちろん、世の中にはいろんな人がいるので「大人なんだからやったことの責任はとれ」という人もいるだろうが、大多数の人は「いい大人だしファンもいるんだから今度から気を付けてくださいね」で幕引きとならないか。

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