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なぜフジテレビは失敗し、アイリスオーヤマは成功したのか 危機対応で見えた「会社の本性」

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月22日 6時10分

 つまり、生活者になりきれば吉沢さんのやったことは、書類送検うんぬんはあってもそこまでの「重罪」ではないのだ。だから、全てのソリューションをユーザーイン発想で考えるアイリスオーヤマとしても、あのような寛大な対応になったというワケだ。

●危機に直面したときに見える組織の「本性」

 「そんなのたまたまでしょ」と冷笑する人もいるだろうが、危機管理は企業のカルチャーが残酷なまでに反映されるものなのだ。

 例えば、役所のようなカルチャーの強い組織の場合、個人の責任をあいまいにして官僚答弁のような会見原稿をつくりがちだ。また、カリスマ創業者が一代で築き上げてけん引してきたようなカルチャーの企業では、とにかく組織内でカリスマを守ろうという「忖度(そんたく)」や「配慮」がまん延して、取材拒否や会見をやらないなど過剰防衛になりがちだ。

 人間にも当てはまる話だが、危機に直面したときにこそ、その組織の「本性」が見えてくるものなのだ。

 そういう意味では、今まさに「ひどい本性」が露呈してしまっているのがフジテレビだ。

●フジテレビも学ぶべき「ユーザーイン発想」

 今回の中居さんの「トラブル」の対応がいかにマズいのかというのは、「ユーザーイン発想」をすれば明白だろう。生活者の中には、会社に命じられて嫌な取引先の社長の隣に座らされてお酌をさせられたとか、下心のありそうな社長と一緒に2人だけで飲みに行かされたなんて話はゴロゴロあって、中には、そのような「トラブル」で心に深い傷を負った生活者もいる。

 警察に相談しようと思っても「みんなに迷惑がかかるから大事にするな」「警察なんかに言っても傷つくのは君のほうだぞ」なんて上司から説得されて、怒りや悲しみを無理に抑え込んだという生活者もたくさんいる。

 このような生活者目線に立てば、中居さんの「トラブル」が先ほどの吉沢さんのように「今度から気を付けてください」で済む話ではないことは明らかだ。

 フジテレビには「挑戦と理念」という立派な経営理念があるが、よくよく読むと「信頼できる情報を発信します」「文化・教育・環境など多様な分野に貢献します」「自由闊達(かったつ)な職場をつくります」と、自分たちの一方的な思いだけしか掲げられていない。視聴者あってのテレビなのに、である。

 厳しい言い方だが、一般企業が掲げる「お客さま第一主義」もなければ、アイリスオーヤマのような「生活者になりきる」という姿勢もない。自分たちが考える「信頼できる情報」を発信してやっている、という「上から目線」なのだ。

 人間でもそうだが、こういう「本性」のある企業というのは、語る言葉の端々に生活者を小ばかにした感じや、生活者とかけ離れた非常識さがにじみ出てしまうものなのだ。

 もはや手遅れの感もあるが、フジテレビ幹部の皆さんは、アイリスオーヤマから「ユーザーイン発想」を学ばせてもらったほうがいいのではないか。

(窪田順生)

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