突然、普通の街が観光地に! インバウンドが押し寄せる「ニッチ観光地」から考える日本観光のあり方
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月24日 8時0分
こうした観光公害は「オーバーツーリズム」とも表現され、世界のさまざまな場所で問題になっている。
●日本に住む人は、改めて「日本の魅力」を考えるべき?
では、ニッチ観光地時代の観光公害をどう解決すべきか。実はすでに多くの対応策が試されている。例えば、外国人向け価格の設定や地域内への立ち入り制限などだ。前者としては、京都市が行っている「宿泊税」の導入、後者は白川郷が行う、午前8時から午後5時までの駐車場制限が挙げられる。
これらの取り組みが先駆的なものであることは間違いない。一方で、筆者はそもそもインバウンド観光客が日本の「何」に惹(ひ)かれているのかを知ることがより大切だと考えている。つまり、日本に住む人自身が、「外国人にとっての日本の魅力」を考えるべきなのだ。すべてを知ることは難しくとも、その解像度を少しでも上げることで、自分たちの生活の場が突然、ニッチ観光地になることへの備えができるのではないだろうか。
では、インバウンド観光客は日本の「何」に惹かれているのか。それは日本の都市景観に見られる、ある種の「不完全な風景」にあるのではないだろうか。
例えば、パリを思い浮かべてほしい。その中心部の景観は統一感があり、世界観がある。エトワール凱旋門を中心とした放射線状の都市は整然としていて美しく、多くの人の心を捉える。
一方で、日本の景観でウケているのは、おそらくそうした「整然さ」ではない。雑居ビルが立ち並び、電線がもつれ、原色の看板が光輝く、そんな「カオス」な街並みである。東京や大阪を訪れるインバウンド観光客がいるのは、そうした街並みに魅力を感じる人が多いからだろう。新宿歌舞伎町や渋谷のスクランブル交差点、大阪の道頓堀、そして前述の高円寺には、まさにそうしたカオス的風景がよく現れている。
●景観保護的には「ダメな景色」は、むしろ「強み」?
日本でこうしたカオスな風景が生まれたのはなぜか。一つには、これまでの日本における行政の「縦割り」が影響していたと考えられる。道路と住宅、あるいは公園などがそれぞれ別のスキームで開発され、街全体としての統一感を生み出すことに失敗してしまったのだ。
また、日本では土地に対する個人の所有権が強く、その土地の所有者であれば実質的にどのような建物でも建てることが可能である。そのため、街並みを俯瞰(ふかん)して見たときに、公的なコントロールが効いていないような印象を与える。逆に、近年盛んに再開発が行われた地域は、ある程度行政がコントロールできた結果、カオスさは薄れている。
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