ココイチはなぜ、つけ麺・ジンギスカン・もつ鍋に挑むのか?
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月23日 8時10分
さまざまな業態に進出する壱番屋(公式サイトより引用)
カレーハウス「CoCo壱番屋」(以下、ココイチ)を運営する壱番屋(愛知県一宮市)が、近年つけ麺・ジンギスカン・もつ鍋など、カレーとは大きくかけ離れた新業態に進出している。
2020年以降、外食業界は原材料高や人手不足などの逆風にさらされているが、事業の多角化で生き残りを図る動きが活発化している。例えば吉野家は、牛丼で培った原材料調達力をうどんや定食などの業態に応用することで、規模の経済を追求している。しかし壱番屋の新業態は、原材料調達や調理法まで、これまでの業態とのシナジーがあまりなさそうなものばかりである。
この背景には、どのような戦略や意図があるのか。本稿では、壱番屋の多業態展開をプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの観点から読み解き、その根拠や狙いを考察する。
●カレーという「金のなる木」を持つ強み
マーケティング理論のひとつである「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」では、企業がもつ事業やブランドを「花形(スター)」「金のなる木(キャッシュカウ)」「問題児(クエスチョン)」「負け犬(ドッグ)」の四象限に区分し、それぞれに異なる投資・成長戦略を当てはめるのが原則とされている。
まず前提として押さえておきたいのは、ココイチのカレー事業が、シェア・認知度ともに高く安定的な収益をもたらす「金のなる木」である点である。カレー専門チェーンとしての強固なブランド力と、日本国内外で長年フランチャイズ展開を続けてきた実績から、壱番屋は外食産業のなかでも比較的安定したキャッシュフローを有していると推察できる。
実際、壱番屋の決算公告によると、飲食業界全体がコロナ禍の影響で厳しい業績となるなかでも、ココイチの既存店の売り上げは比較的堅調に推移していた。立ち食いそばやハンバーガーなどと並び、単価と回転率のバランスが良いカレーは、景気変動に強い外食メニューの代表的存在でもある。こうした背景から、壱番屋はカレー事業という強固な土台を持ちながら、さらなる成長エンジンをどこに見出すかが経営課題になっていると考えられる。
●壱番屋の「花形」不在という問題
事業の多角化を進めるうえで重要になるのは「花形」。つまり、市場の成長率も高く、高いシェアを獲得できれば大きな利益を生む分野の確保である。
壱番屋が現状抱えていると考えられる課題は「金のなる木」はあるものの、新たな「花形」となるような事業や業態を十分に育てきれていない点だ。カレー以外の高い成長を見込める事業が乏しければ、企業としての長期的な発展は望みにくい。
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