窮地の日産、ホンダとの協議開始は「最後の審判」か 統合に至るまでに乗り越えるべき課題
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年1月28日 5時55分
このうち(6)や(7)は一朝一夕に実現できるものではなく、現現時点では全くの絵に描いた餅といっていいでしょう。目先で最も現実的に効果が見込めるものは、生産部門に関するものと考えられます。具体的には上記の(1)(3)です。
特に(3)は、日産の工場リストラとセットで取り組むべき最優先課題で、統合効果の観点からは(1)も優先度合いが高いでしょう。一般的に車台の新規開発には数百億円規模の投資が必要であり、1つの車台で2社分、より多くのモデルが生産できれば、両社合算でのコスト削減はかなり大きなものを期待できるからです。
その他、(4)も実効性が高いと見られます。しかし、自動車業界特有といえる下請け企業との独特な関係があり、一つの共通部品について、ホンダと日産どちらの下請けに寄せていくのか、それを決めるのはかなりハードルが高いでしょう。
昔と比べれば「ケイレツ」構造は弱くなったとはいえ、下請けいじめ問題がいまだにくすぶっている実情を見ても、業界ピラミッドの存在は否定しがたいのは間違いありません。部品の共通化を進めるなら、両社で3万社を超えるとされるサプライチェーンの再編も必至であり、こうした業界特有の特殊事情が統合効果の即効性を失わせる可能性は否定できません。
●次世代自動車の「覇権」に必要なもの
開発に関して、日産が大きく出遅れて北米での販売激減につながったハイブリッド車の技術をホンダから供与されることは、コスト削減および販売能力向上の両面から大きなメリットが得られると思われます。EVの技術開発では日産が先行してはいたものの、ホンダも独自開発での製品化に至っており、既存の技術共有より、むしろ今後増加する研究開発費を、両社で分け合えるメリットが見込めるでしょう。
こうした開発に関する統合効果の陰にある存在として、次世代自動車では駆動技術以上に重要性が高まりそうな、車載ソフトの共同開発によるメリットも見込んでいるはずです。車載ソフトで主導権を握ることは「自動車のスマホ化」といわれる次世代自動車製造・販売の主導権を握ることを意味します。
この世界はスマホのOSやアプリと同じく、ネットワークをいかに早く支配できるかにかかっています。通信ネットワークに関して、接続しているユーザー数の二乗に比例するという「メトカーフの法則」があり、この法則に従うならば、接続ユーザーを増やすことがより大きな収益を生み出すことになるのです。
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