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「Snapdragon 8 Elite」は何が進化したのか PC向けだったCPUコア「Oryon」採用のインパクト

ITmedia Mobile / 2024年10月28日 16時15分

 GPUもさることながら、NPU部分も強化が行われている。SnapdragonシリーズのNPUであるHexagonでは、今回、行列演算のTensorコアのみならず、ScalarとVectorの両方のコアが2倍に増加している。昨今は大規模言語モデル(LLM)などを用いた生成AI(GenAI)や音声・画像認識がオンデバイス上で実行されるケースが増えているが、NPUの強化により推論の実行速度や低消費電力動作性能の向上が期待できる。

 今回後者2コアの強化が特に行われた理由としてQualcommは、ScalarについてはAI関連の演算処理一般の向上が期待でき、VectorについてはLLM実行におけるプロンプト処理の増大に特に大きな効果をもたらすことを挙げている。つまり、過去2年ほどの間にAIの世界で起きた利用スタイルのトレンド転換を受けてNPUのコア構成を変更したことになる。前述のゲーミングなどの話同様に、実需を見越してハードウェアに改良を加えてきたというわけだ。

 結果としてAI推論におけるパフォーマンスは大幅な向上が見込まれており、MLPerfなどの推論に特化したベンチマークではSnapdragon 8 Gen 3の世代に比べ、Snapdragon 8 Eliteでは2~10割の高速化という大幅な性能向上を実現している。

 詳細は別のレポートでも触れるが、ChatGPTなどクラウドでGenAIが認知され始めたTransformerなど比較的新しい世代のAI技術の世界は、次に急速な性能向上によってオンデバイスAIの発展をもたらしている。

 米Qualcommプレジデント兼CEOのCristiano Amon氏は、デバイスの利用スタイルが大きく変化する画期的なトレンド転換のただ中に差し掛かっていることを示唆しており、デバイスとの接点となるUI・UXがより人間に寄り添ったものになりつつあると述べている。ChatGPTのような対話型AIはその典型だが、情報の入力手段がテキストやジェスチャー、音声のみならず、画像などの周辺情報を合わせて総合的に判断することで、より複雑な処理が可能になる。

 デモの1つでは、レストランでの会計時の割り勘を行うにあたり、会計の“紙”をカメラで読み取って「人数分で割って」と問いかけることで自動的に個々の会計額を出してくれる様子が紹介された。

 また、過去の出費状況など個人情報を蓄積することで、デバイスが節約術のアドバイスをしてくれる。人語を理解するエージェント(Qualcommでは「AI Orchestrator」と呼んでいる)とデータを組み合わせることで、さまざまな作業が可能になるため、今後アプリやエージェントを開発するベンダーにとって、新しい可能性にチャレンジする機会が生まれつつあるといえる。

 この他、Qualcommが地味に何度も強調していたのが「Webブラウザ動作速度の向上」だ。前述のシングルスレッド性能向上に結び付く部分もあるが、全体的な性能チューニングによりSnapdragon 8 Gen 3の世代に比べ、Snapdragon 8 Eliteでは2倍近い性能向上を実現している。

 Webブラウザ上で動作するアプリケーションの多さもさることながら、モバイルアプリ上であってもインタフェースそのものはWebブラウザのエンジンを活用しているケースが非常に多く、体感として「最も実用的な性能向上の恩恵を受けやすい」部分といえる。利用スタイルに寄り添う形で、OEMメーカーやソフトウェアベンダーなど全ての関係各社との連携でSoC開発を行っているQualcommが最も注視しているポイントでもある。

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