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「AI-RAN」でソフトバンクのネットワークは何が変わる? ユーザーのメリットとビジネス上のインパクトを解説

ITmedia Mobile / 2024年11月16日 9時35分

 DU側と同じ基盤にAIを実装するメリットは複数ある。1つが、実際に信号を受信する端末と距離が近く、遅延が少ないこと。距離的に遠く離れたサーバのAIを動作させるのとは異なり、基地局のすぐそばにあるため、その分レスポンスがよくなる。また、キャリアのネットワークはキャリアとそのユーザーの間で閉じているため、セキュリティのリスクも低減できる。

 ロボット犬を使った不審者検知のデモでは、この遅延の少なさが生かされていた。ロボットが人間を追尾するには、その動きを瞬時に解析して、動きを制御する必要がある。ソフトバンクによると、1秒間に10回のロボット制御が求められるという。1回あたりの処理に許容される時間は、100msだ。一方で、LLM(大規模言語モデル)の処理にも60ms程度の時間がかかる。つまり、無線区間では遅延を40ms以内に収めなければならない。これを実現するには、基地局に近い場所でAIを動作させる必要があるというわけだ。

 実験では、意図的にネットワーク区間への遅延を挿入したところ、ロボット犬の処理が追い付かず、人間をきちんと追尾できない様子も確認できた。こうした“瞬発性”を求められるAIの処理に向いたソリューションといえる。基地局の近くに分散配置したサーバを動作させるMEC(Multi-Access Edge Computing)という仕組みは5Gで規定されているが、それを単独で実装するのではなく、無線制御と同じGPU上で処理するのがAITRASの特徴だ。

 これを導入すると、ソフトバンクは自身で開発したAIのサービスを法人などのユーザーに販売できることに加え、余剰リソースを外部に開放することも可能になる。ビジネスの観点では、基地局投資の回収方法が多様化するといえる。NVIDIAのテレコム担当バイスプレジデントを務めるロニー・ヴァシシュタ氏が「AIを使って初めて(基地局を)収益化することが可能になる」と語っていたのは、そのためだ。

 ソフトバンクの表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏は、「最終的に、われわれの20万ある基地局全てに入れるか、クラウドRAN化している部分のベースバンド部分に入れるかはあるが、ソフトバンクはAI-RANでネットワークを全部作り直すつもりでいる」と意気込む。AITRASの発表は「その第一歩」という位置付けになる。

●AIで干渉調整も容易に ユーザーにとってのメリットは通信品質の向上

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