「AI-RAN」でソフトバンクのネットワークは何が変わる? ユーザーのメリットとビジネス上のインパクトを解説
ITmedia Mobile / 2024年11月16日 9時35分
ユーザーにとってのメリットは、通信品質が上がるところにありそうだ。湧川氏も、「干渉調整がしやすく、ネットワーク品質を上げられる」と語る。都市部では、特にこのチューニングが難しいため、AIで簡単に品質を向上できるようになれば、ネットワーク品質改善のサイクルも高速化しやすい。もともと、高トラフィックエリアに対して密に基地局を展開しており、快適さに定評のあるソフトバンクだが、その強みをさらに発揮しやすくなるといえそうだ。
実証実験では、4.8~4.9GHz帯の周波数を活用。帯域幅は100MHz幅となり、最大4レイヤーのシングルユーザーMIMOを利用した。これらRUは全て先に挙げたNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipのサーバに接続されており、ここで一括制御されている。この環境で、100台の端末を同時に接続し、動画視聴に成功した。
4.9GHz帯は、現在ソフトバンクが5Gの周波数として割り当てを申請している周波数帯。ドコモ、KDDI、楽天モバイルは手を挙げていないため、認定が確実視されている。その意味では、ソフトバンクの商用環境に近いといえる。湧川氏も、「基本機能なってしまうが、ここを切り出して商用化していく」と語る。
●2025年度はPrivate 5Gとして導入、一般展開は2027年度からで海外展開も視野に
ソフトバンクの先端技術研究所は、基礎技術を研究する組織というより、新しい技術の社会実装に重きが置かれている。言い換えるなら、最新技術の商用化を目指すための研究や開発を行う部隊といえる。AITRASも同様で、先に挙げたように、商用環境に近い周波数帯が用いられており、目標も明確だ。湧川氏によると、2025年度には一部法人顧客の専用網となるプライベート5Gに展開するミニマクロ局として、サービスを開始するという。
一般コンシューマーがその恩恵にあずかれるのはもう少し先になり、ソフトバンクの商用網への採用は2027年度になる。その間、機能にも磨きをかけていく方針だ。先に挙げたように、現状ではRUが4レイヤーのシングルユーザーMIMOだが、より多くの端末との通信をさばける64T64RのMassive MIMOや、MU-MIMOへの対応を2025年度中に完了させると同時に、AIの性能向上やオーケスト―ターのアップデートも行っていくという。
先に引用したように、湧川氏が「基本機能になってしまうが、ここを切り出して商用化する」と語っていたのは、Private 5Gで先行導入することを意味している。機能面では、「次のチャレンジになるのが64T64RのMassive MIMOとMU-MIMO」(同)だ。いずれもシングルユーザーMIMOと比べ、アンテナの数が一気に増えるため、計算量が膨大になるといわれている。
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