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ニッチだが奥深い「映像伝送」の歴史 コンピュータ・グラフィックスからIP伝送まで

ITmedia NEWS / 2024年6月27日 11時5分

 これは独自I/O基盤にHDDを直結し、そこにCGの連番ファイルを登録すると、内部で4:2:2のD1フォーマットへ変換され、ボード背面の端子からリアルタイムで動画再生が可能であった。出力はアナログコンポジット、S-VHS、アナログコンポーネントに対応したことから、ベータカムと組み合わせて長尺のCGでもビデオ書き出しが可能になった。

 CG書き出しという点では、ハイエンドでは数千万円かけて30秒程度の記録しかできないメモリレコーダーがある一方で、業務レベルでは数十万円で1時間以上D1記録できる「PAR」があるという状態となった。

 ただ不幸なことに94年にはAMIGAが倒産してしまい、AMIGAを中心としたCGの世界も徐々に終息へ向かっていった。放送の歴史から見れば、有名なNewTekの「Video Toaster」よりも、DPSの「PAR」のほうがインパクトが大きい。

 コンピュータとビデオ映像の関係は、映像の受け渡しがテープであった時代と、ファイル転送で済むようになった時代とで全く考え方が変わる。テープからの取り込みや書き出しは非常に高コストなので、放送局とその周辺現場ではあまり成長しなかった。00年になるとデジタルハイビジョンが登場し、ハードルが上がった事で、しばらくはコンピュータで映像を扱うことが難しくなった。

 やがてコンピュータの性能がデジタルハイビジョンに追い付く頃には、テープ記録ではなくデジタルメディアやネットワーク伝送の時代になっていた。

●HD時代の幕開けとIP伝送

 00年代初頭のデジタル放送開始とHD(デジタルハイビジョン)時代の幕開けは、ソニーのデジタルベータカム一択となった。伝送方式もHD-SDIに一本化されており、4Kの登場まではほぼこれだけだった。

 一方で記録メディアのほうは、03年頃から脱テープの動きが加速する。ソニーはSD解像度ながらも独自ディスクに記録する「XDCAM」を立ち上げ、05年には「XDCAM HD」としてハイビジョン対応した。04年にはパナソニックがメモリ記録型の「P2」を立ち上げた。

 放送のデジタル化により、番組送出は徐々にVTRからビデオサーバへシフトしていくわけだが、そうなると放送局への納品や素材持ち込みはテープだけではなく、デジタルメディアやファイル転送によるデータ納品も可能になっていった。とはいえそれらは記録メディアの話であり映像伝送ではないので、また別の機会に譲ることとする。

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