AIは“学ぶ友”になれるのか? 学校でのAI活用、先生を育てる教育学部の先生に聞いてみた
ITmedia NEWS / 2024年7月19日 11時34分
これは学校教育においても重要な視点で、個人の枠にとどまらずいろんな知見を総合して関連付けていく力が必要、ということに他ならない。例えばあさりはお湯で煮ちゃえば砂出せるじゃん、という意見を、どのように統合できるか。自然科学的に正しいことは、社会倫理上でも正しいとは限らない。何が最適解なのかを、他者との相互作用のなかで考えていく必要がある。今の学校教育は、そうした方向にある。
これまで他者とは、文字通り「他の人間」を指していたが、AIも他者の1つとなり得る。実際にAIとディスカッションした生徒達からは、
「友達だと、変な質問を質問をしたときに『えっ?』みたいな反応をされたり、聞きづらいこともあるけど、AIは何でも知っている友達という感じで、どんなことも聞きやすいと感じます」
「友達とはタメ口で話すので話しやすいけど、AIは敬語で行儀が良く感じるので、気まずく感じる時もあります」
という意見が聞けた。友達、先生、地域の人々といった多様な「他者」の1つとして、AIもまた違った立ち位置が確立できる可能性を感じさせる。
●学校教育にマッチするAIとは?
今回中村先生に協力して生成AIのキャラクターを提供したのは、リートンテクノロジーズジャパンだ。同社は生成AIの無料サービスで知られるところだが、これまでAI自体を学ぶ教育プログラムも同時に展開してきた。ただ今回のように、学校教育の中にAIを取り入れるという試みは、同社にとっても初めてのチャレンジになる。
公立中学校の授業にAIを取り入れるという実証研究と、その未来像について、中村先生に話を伺った。
――今回こうした実証研究を立ち上げられたのは、どういうきっかけだったんでしょうか
中村氏(以下敬称略):生成AIのサービスが登場したのが、おそらく2022年末から2023年ごろだったと思うんですけど、それが社会に急速に広まる中で、学校で生成AIを使わなくても、子供が家庭で使ってくるという状況が起き始めてきています。そういった中で、生成AIの使い方について学校でも指導しなければならないし、逆に生成AIをうまく使うことができれば、教育効果を高めることができるのではないかという期待があって、この研究を始めたという経緯があります。いろいろ準備もあったので、実際に始められたのは24年度の4月からということになります。
――子供達にAIを使わせる上では、その回答の正しさとか、授業内容から離脱しないようにといった、ある程度の囲い込みが必要なのかなと思います。それはAIのほうでRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)などを使って調整していく形ですか?
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