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「ゼルダの伝説 ティアキン」制作の舞台裏 「トーレルーフ」が生まれるきっかけとなった“3つのアイデア”

ITmedia NEWS / 2024年8月28日 8時5分

 そこで、これらの高度なデバッグツールをテスターにも提供することにした。具体的には、開発者が使用している各種ツールをテスターも使えるようにし、開発ウィキやチャットツール、タスク管理ツールなども共有。さらに、開発者同士のミーティングにもテスターを参加させ、最新の開発情報をリアルタイムで共有した。

 大礒さんは、単にツールや情報へのアクセスを提供するだけでなく、テスターがこれらを適切に使いこなせるよう、ハンズオン資料も提供した。必要に応じて、Houdiniなどの有償ライセンスのツールも提供できるよう環境を整えた。

 この取り組みにより、テスターはより深いゲーム理解のもとでテストを行えるようになった。結果として、単なるバグ報告だけでなく、ゲームプレイの改善提案や、開発者が見落としていた問題点の指摘など、より質の高いフィードバックが可能になった。

 さらに、この協力体制は予想以上の効果をもたらした。テスターからは「チームの一員という意識を持てるようになった」という前向きな声が聞かれたのだ。これは、開発者とテスターが同じ視点から、同じ目標に向かってゲーム制作に取り組めるようになったことを意味している。

●「トーレルーフ」に結実した3つの取り組み

 ティアキンに搭載した独創的な機能「トーレルーフ」。この機能の誕生は、ここまで紹介してきた3人の専門家の独立した取り組みが予期せず融合した結果だった。アイデアが生まれたきっかけはテストプレイ中に浮上した「プレイヤーが洞窟の奥まで探索した後、歩いて引き返すのが面倒」という問題が指摘されたことだ。

 この問題に対処するため、開発チームはデバッグツールの一つ「指定場所へ即座にワープする機能」に着目。「プレイヤーがこの機能を使えれば面白いのではないか」。この発想がトーレルーフの始まりだった。

 しかし、単純なワープ機能では、ゲームバランスを崩す恐れがあった。そこで、天井を通り抜けて上に移動するというアイデアが挙がった。これなら、プレイヤーの探索意欲を損なうことなく、スムーズな移動を実現できる。

 このアイデアを技術的に可能にしたのが、朝倉さんが開発したボクセルデータ構造だった。3D空間全体をボクセルで表現していたことで「プレイヤーが到達可能な床」を高速かつ正確に判定できる状態が整っていた。トーレルーフの基本的なメカニズムを確立した。

 しかし、新たな課題が浮上。地形の裏側に残された、コリジョン(CGモデルが衝突したときの判定をする領域)の小さな穴の問題だ。朝倉さんはこの問題に頭を悩ませた。これらの小さな穴を放置すれば、プレイヤーが意図しない場所に侵入したり、ゲームの進行を妨げるバグが発生する可能性があったからだ。

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