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ソニーが「アニメ制作ソフト」をイチから開発する理由――関係者に聞く、課題と解決の先にある“可能性”

ITmedia NEWS / 2024年9月6日 12時20分

 ただアップデートがおよそ10年に渡って行われておらず、最新OSへの対応も心もとない状況だ。そんな中「詳細はまだお伝えできないのですが、現在のデジタル技術を生かして彩色をさらに効率的に行えるような機能についても鋭意開発中です」と荒木氏は話す。

●現場でも求められていたツールの刷新

 開発に携わるエンジニアが頻繁に両スタジオを訪れ、作画・仕上げスタッフに実際に開発中のAnimeCanvasを試してもらい、フィードバックを受けて次の開発ステップに反映するという手法をとっているのだという。忙しい現場から「今使っている環境をどうしても変えたくない」といった声はほとんどない、とソニー・ミュージックエンタテインメント EdgeTechプロジェクト本部の高橋学氏は話す。

 「特に仕上げ工程に携わる方々とは、前提となる課題=持続性について共有できていると感じます。一方、作画工程についてはいろいろな難しさがありますが、頭から否定されるということはありません。例えばアニメ向けの機能の改善についてリクエストしたい、となっても、やはり既存のソフトはイラスト・マンガ向けとして市場に受け入れられているものですから、対応にそこまで大きな期待は持てないわけです。AnimeCanvasであれば『打てば響くのではないか』と期待して、前向きに意見をくださる方が多いのではないかと思います」

 もちろん既存の環境との連携は希望されているし、実際の制作工程のなかに本格導入する段階になれば、更にいろいろな反応が出てくるだろうと高橋氏も認めるが、特にコロナ禍を挟んだここ数年間にクリエイターの意識の変化も感じるという。リモート作業が増え、デジタルデータでの素材のやりとりが好むと好まざるとにかかわらず増えるなか、グループの支援も得ながらデジタル制作環境の整備が進んだこともその背景にはある。

●ソニーがアニメ制作ソフトを開発する必然性

 AnimeCanvasは、ソニー・ミュージックエンタテインメント(高橋氏)とソニーグループ(荒木氏)が主に技術開発を進めているが、プロジェクトマネジャーを務めるのは、A-1 PicturesとCloverWorksの清水暁代表だ。

 「ソフトウェアの保守性や持続性を確保したいというのもありますが、アニメ制作の生産性を高めるうえで、まずはその基盤を整える必要があるというのが大きいのです」

 年間200タイトル前後の新作が制作されるテレビアニメに加え、近年では劇場作品も需要が高い。1話あたりおおよそ4000枚以上の彩色された動く絵が必要になるが、その多くを熟練の「クリエイター」が担う繊細な作業で品質を保っているのが現状だ。アニメ制作の効率化や生産性を高めるうえで、将来的には単純作業などの自動化も可能性としては考えられるが、まずはその基盤となる制作ソフトそのものを開発する必要があった。

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