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ソニーが「アニメ制作ソフト」をイチから開発する理由――関係者に聞く、課題と解決の先にある“可能性”

ITmedia NEWS / 2024年9月6日 12時20分

 「もちろん、よく指摘される紙とデジタルの混在の解消という狙いもあります。これは作画・仕上げといった実際に描く工程だけでなく、その周辺の工程についても利便性の向上、コスト削減につながります。そのためにも、いま紙に手で描いている方々にデジタル環境に移行頂くにあたってのハードルをできるだけ下げるべく、アニメ以外の機能がないシンプルなソフトが欲しいのです」(清水氏)

 清水氏は描くだけであれば「紙の方が便利」とも話す。セットアップの必要もなく、作画用紙を取り出してすぐ描き出すことができる。習熟すれば鉛筆によって繊細なニュアンスも表現することも可能だ。しかし、制作工程全体をみたときには、デジタル化は避けて通れない(※)。ならば、AnimeCanvasを可能な限り紙の使い勝手に近づけたものにしたいと意気込みを語ってくれた。

※紙に鉛筆で描かれた原動画は、仕上げ工程に回す際、いったんスキャンが必要となる。その際、位置や角度がわずかでもズレてしまったり、線がかすれてしまったりすると、彩色前に1枚1枚手作業での修正・補正(TP修正)が必要となってしまう。デジタルデータとして工程間の素材の受け渡しが行われることは、効率化に直結する。

 現在主流となっているセルシスのクリスタやRetas!は、業界標準ツールとして制作現場はもちろん、人材育成を行う専門学校などでも導入されている。新規ソフトとなると使い勝手が変ってしまい学習コストが掛かるのではないかという懸念もあるが、荒木氏によれば仕上げツールについては使用感が損なわれないように設計を進めており、作画ツールについてはイラストやマンガ向けに多機能になっている部分をできるだけシンプルにし、レイヤー構造や解像度など制作現場、プロジェクトの事情に応じた共通ルールが適用できるようになることを検討中だという。

 また、彩色前のプレビューで用いられる「線撮」や、絵の動きや演出のタイミングを可視化した「タイムシート」もAnimeCanvasからデジタル形式で出力することも可能にする計画だ。

 これらが実現すれば、現在は外部スタッフも含めクリエイターごとに仕様が異なるデータをチェックし、修正指示を出したり作業を行ったりする演出担当者や作画監督による確認・修正工程の効率化も視野にはいってくる。

 またタイムシートがデジタルで制作工程で共有されることで、仕上げにとどまらず彩色された絵に対してさまざまな加工を施す撮影工程でも演出意図とタイミングの把握が可能になることも期待できる。あくまでスタンドアロンなソフトではあるが、現状さまざまな作業手順・フォーマットが混在しているアニメ制作工程の整流化(※)の第一歩となることがAnimeCanvasの目指すところだ。

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