「もう電波放送は終わっていいんじゃないか」――イギリス放送通信庁の提案、ネット完全移行は現実的か?
ITmedia NEWS / 2024年10月23日 14時57分
キャッチアップが遅くて恐縮だが、2024年5月に英国の放送通信庁(Ofcom)が、同国における放送通信コンテンツの将来像を検討した報告書「Future of TV Distribution」を公開していた。視聴者動向や市場のダイナミクスを踏まえながら、今後公共メディアである放送サービスをどのように持続していくかについて検討している。
その結果、3つのオプションが提案されている。
1. 地上デジタル放送の効率化:放送システムや放送信号を効率化し、30年代でも地上デジタル放送が持続可能なようにする。これは放送方式が変わるため、視聴者の受信器の買い換えが発生する。
2. 地上デジタル放送を最低限のコアサービスに縮小:放送では主要な報道や公益などのコアコンテンツを維持する一方で、その他のコンテンツはインターネットに移行する。インターネットが利用できない場合のバックアップは別途検討。
3. 地上デジタル放送の段階的廃止:全ての視聴者がインターネットサービスに移行できるよう支援し、地上デジタル放送を段階的に廃止する。公共サービスメディアの普遍性を確保しつつ、インターネットへの移行に取り残されるものが出ないように配慮する。
とくに3は、ゆくゆくはテレビ放送をやめて、全てインターネット上に移行してしまうという話で、なかなか骨太の話である。ただ英国営放送BBCでは、3を支持しているという。この背景はなかなか複雑だ。
今回はこのレポートをベースに、なぜこのような検討を行うに至ったのか、また日本でも同様の話になっていくのか、そのあたりを考えてみたい。
●数年で大きく変わった視聴者像
テクノロジーの発達により、英国の視聴者も多様なメディアプラットフォームにアクセスするようになった。YouTubeやその他のオンライン動画の視聴時間は、18年には1人当たり1日35分間だったのに対し、22年には54分に増加した。
以下の図は、全てのデバイスで人口全体の動画コンテンツの平均消費量を示したものだ。テレビ放送のライブ視聴は、23年においても全動画視聴時間の39%を占める。一方VSP(video-sharing platform:動画共有サイト)と定額制ビデオ・オン・デマンド(SVoD)/広告支援型ビデオ・オン・デマンド(AVoD)といったインターネット勢を合計すれば31%となり、テレビ放送のライブ視聴に匹敵する枠をとっているのが分かる。
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