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「もう電波放送は終わっていいんじゃないか」――イギリス放送通信庁の提案、ネット完全移行は現実的か?

ITmedia NEWS / 2024年10月23日 14時57分

 先に3の地上デジタル放送の段階的廃止を検討してみる。テレビ局はすでに電波網の経営から切り離されており、今後伸びしろが期待できるIPに集中したいというのは当然だろう。電波放送向けのコストがゼロになれば、放送局にとってはかなり楽になるはずだ。また放送で使っていた電波帯域は、完全に別の用途で利用できるため、社会全体としても利益がある。

 一方でこれまで無料放送に依存してきた、ネットにつながっていない層に対しての手当が必要になる。ただこれはハードウェアの買い換えはあまり考えなくて良い。なぜならば、昨今のテレビの大半はネット対応のスマートTVであり、また入力端子に差し込むだけでIP対応となるスティック系のデバイスも廉価で売られている。要するに機材的にはReadyになっていて、単にネットにつながっていないだけなのだ。

 2の地上デジタル放送を最低限のコアサービスに縮小は、1と2の折衷案である。電波放送はやめないまでも、大幅に縮小する。電波帯域もある程度整理できるだろう。

 最低限の情報は伝えられるので、無料放送に頼ってきた層を切り捨てることにはならない。逆に言えば、手当てしないという事でもある。これは、必要最小限の情報を伝達するという公共メディアの社会的責任を果たす一方で、社会的弱者を見捨てるかようなダブルスタンダードとなる可能性がある。

 こうしてみると、1は放送のハード事業者が支持、3はテレビ局が支持という姿が見えてくる。期限としては、全国のマルチプレックス事業者の免許が切れるのが34年となっており、そこまでには何らかの結論を出す必要がある。あと10年だ。BBCは27年に免許が切れるが、この議論がそれまでにまとまるとは思えず、おそらく34年まで更新するだろう。

 一方で日本を振り返ってみると、冒頭で述べたように垂直統合型なので、英国と同じ状況ではない。放送とIP両方のハード面をどこまで持ち続けることができるのかは、ひとえに各放送局の経営手腕にかかっているという状況だ。

 地上波放送はいまだ人気のあるインフラで、IPがそれに勝っているとは言いがたい。ただ4K衛星放送は、WOWOW 4Kが25年2月28日24時をもって放送サービスを終了すると発表した。21年にも東北新社グループの「ザ・シネマ4K」が撤退しており、コンテンツとしての「目玉」がなくなった状態である。

 東京オリンピックを目指して国の旗振りで始まった4K衛星放送だが、残された各放送局はどこまでこの負担に絶えられるのか。英国での議論もにらみながら、日本でも総務省を中心に、衛星放送の在り方の再検討は待ったなしだろう。

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