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「もう電波放送は終わっていいんじゃないか」――イギリス放送通信庁の提案、ネット完全移行は現実的か?

ITmedia NEWS / 2024年10月23日 14時57分

 従って、地上波を停波するかどうかという話は、テレビ局としては単純に外部に支払っている送信コストの話でしかない。一方でハード事業者にとっては、死活問題である。

 現在ほとんどのテレビ番組が、電波網とIPのハイブリッドで配信されているが、テレビ局側は放送網への支払いに加えて、IP配信費も追加された格好だ。さらにIP配信では、多数の配信プラットフォーマーのために、同じ番組でもSDやHDなど異なる解像度や納品フォーマットデータを用意しなければならない。

 つまりテレビ局は、配信プラットフォームが増えれば増えるほど、配信コストがかかっていくという事になる。IPは今のところ視聴者も順調に推移しており、技術革新に小まめに追従できることで配信コストは徐々に減少していくことが考えられる。一方電波網による放送は視聴者が減少しており、配信コストはほぼ固定費で変わらない。どこかの時点で配信コストが収益を上回る時が来ると予測される。

 一方でIPの世界では、テレビ番組はNetflix、Disney、Amazon Primeなどの海外プラットフォーマーが手配してくる強力なコンテンツと戦っていく必要があり、さらにはYouTubeなどの動画共有プラットフォームコンテンツとも時間の取り合いになる。

 そうなると考えられるのは、テレビ局だけで独自のIP配信プラットフォームを立ち上げ、海外プラットフォーマーに対抗していくという方法論だ。イギリスでは今年、BBCが中心となって民放各社も参画する「Freely」というプラットフォームを立ち上げた。

 そこまでふまえて、改めて最初の3つの選択肢を見てみると、最初に見た印象とはまた違った景色が見えてくる。

●改めて考える3つの選択肢

 1の地上デジタル放送の効率化は、電波放送設備にさらに追加投資して最新のものにアップグレードし、使用電波帯を圧縮することで電波資源を別の用途に有効活用するという、電波行政までも含んでいる。Arqivaは、追加投資によって「現在と比較して、エネル ギー効率と炭素効率を最大50%改善できる」と主張するが、それは追加投資の金額によっては相殺される可能性がある。

 また、新放送方式に対応するためには、英国民全体でのテレビの買い換えが必須となるが、地上デジタル放送のみに閉じ込められている層は高齢者や低所得者層であり、政府の支援なしには買い換えも難しい。誰でも受信できる最低限のインフラとしての電波網の重要性は理解するところではあるが、要するに金をかけてでもそれを維持する必要があるのかという点では、あまり賛同を得られていない。むしろ災害対策などにおいては、ラジオ放送網を維持すべきという意見もあるようだ。

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