ガチャマシン開発者は「電源いらず」にこだわる? タカラトミーに聞いたカプセルトイ60年の歴史と矜持
ITmedia NEWS / 2024年10月31日 19時35分
この辺りの事情は、セガにおけるジュークボックスとか、コルグにおけるリズムボックスを想起させる。日本の工場の技術力が、海外の製品と出会って、何かが始まる時代だったのだろうと思う。
そして1986年に、初の日本製のガチャマシン「ビッグマシン」を当時のトミーが発表する。お金を入れるとルーレットが回り、当たりが出るとカプセルが2個出てくるというギミックが搭載されたマシンだった。ガチャ自体がくじ引きっぽい遊びなのに、そこにさらにルーレットを被せてくるあたりに、新しいビジネスの始まりが感じられる。
そして1988年、タカラトミーアーツの前身となるユージンが設立される。「トミー時代に『ビッグマシン』を作って、それを担当していたメンバーが独立してユージンを設立しました。で、ガチャのエポックといわれる『スリムボーイ』を作るという流れになります」と福本さん。
スリムボーイは、トミー→ユージンの歴史の中では3代目のガチャマシンとなる。登場したのは1995年。
「スリムボーイから、ガチャは一気に変わりました。それまで、ガチャマシンは1台で完結していたので、複数台設置したい場合は横に並べて置くしかありませんでした。台の上にマシンが乗っているスタイルですね。で、縦に置きたい場合は金属のフレームを使ってマシンを縦に並べるんですけど、それでは安定が悪いんです。スリムボーイは、プラスチック製で始めから縦に2段連結しています。また、スーパーなどに複数台並べて置かれるようになったので、什器の幅に合わせて並べられるように、スリムな形状にしました」
さらにこの頃から、100円、200円だったカプセルトイの金額が上がっていく。しかし、実はこのお金を入れてダイヤルを回すという部分の構造は、10円を隙間に入れてダイヤルを回していた初期のマシンと今も基本的には変っていないのだという。
「お金を入れる場所は変わりましたけど、中でやっていることは同じなんです。コインの大きさと厚みで金額を判別して、必要な枚数が入れられるとロックが外れてダイヤルが回る仕組みは、ずっと変わりません。タカラトミーアーツ製のマシンは、コインの枚数を厚みで見てますけど、その長さで金額をカウントするマシンを採用しているメーカーさんもあります。そんな風に構造に違いはありますが、やっていることは同じですね」と福本さん。
この仕組みのおかげで、ガチャマシンは電源がいらない。だから設置場所を選ばず、駄菓子屋の店先にも置けるし、駅のコンコースなどに大量に並べられるわけだ。また金額のカウントも厚みや長さを判別する部分を変えるだけなので、同じ機械で300円のものも400円のものも、その中身に応じて売ることができる。これらをデジタルどころか電動でさえなく、機械の機構だけで実現しているのがガチャマシンなのだ。
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