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一軒家に核爆弾が落ちる、老夫婦の日常アニメ映画 「風が吹くとき」がいま公開される意義

ねとらぼ / 2024年8月3日 20時0分

 そして、2人がもしも正しい情報を得て、危機感を持って対応できていたら……(核爆弾が落とされる前だったら逃げる選択肢が取れたかもしれない)」と思う反面、「もう何をしても無駄かもしれない」という絶望も付きまとう。そして、終盤の2人に訪れるさらなる変化と、それでもなおも残るお互いの愛情を知り、涙する方も多いはずだ。

●「オッペンハイマー」とあわせて見てほしい理由

 同じく原爆を扱った映画で、2024年の米アカデミー賞作品賞をはじめ数々の受賞を果たした「オッペンハイマー」も、8月2日から全国でアンコール上映されている。同作の監督であるクリストファー・ノーランも、子ども時代に「風が吹くとき」を見ていたそうだ。

 ノーラン監督は「私が育った1980年代のイギリスは核兵器や核の拡散に対する恐怖感に包まれていた」とも語っており、それこそが実在の人物であるオッペンハイマーを描いた理由のひとつだったと明かしている。そしてそれは、「風が吹くとき」の原作が描かれた時期とも一致している。

 また、アニメ映画版の「風が吹くとき」を監督したジミー・T・ムラカミは、自らも長崎に住む親戚を原爆で亡くした日系アメリカ人であったそうだ。作り手の当時の核兵器への恐怖や憤りも、確実に作品に反映されているのだろう。

 「オッペンハイマー」は「原爆の父」と呼ばれた者が、「世界を核兵器が存在する状態へと変えた」事実と罪を真正面から捉えた内容だった。あわせて、この「風が吹くとき」を見れば、「ささやかな老夫婦の日常が、突然、あるいは緩やかに破壊していく」という、別の角度からの核兵器の恐ろしさを知ることができる。

 「オッペンハイマー」の公開後かつ、ロシアによるウクライナへの侵攻とイスラエルによるガザ地区への空爆が続いている2024年のいま、「風が吹くとき」があらためて公開される意義は大きい。

●「窓ぎわのトットちゃん」の視点

 戦中を舞台に、「自分の世界以外のことを知らない」視点が貫かれたアニメ映画は他にもある。それは2023年末に劇場公開され絶賛の嵐となった、黒柳徹子の自伝的小説を原作とする「窓ぎわのトットちゃん」だ。

 「窓ぎわのトットちゃん」は自由な校風の学校に転校してきた女の子の日常を描く、子どもでも楽しく見られる内容である一方、戦争がじわじわと「侵食」してくる様がとてつもなく恐ろしい作品だ。仲の良かった駅の改札員がある日突然男性から女性になっていたり(男性はどんどん徴兵されていったため)、それまで「パパ」「ママ」と呼んでいた両親を外来語で呼ぶのを禁じられたり、さらには自由な校風の学校にも「全体主義」が忍び寄っていく。

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