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GPUの「レイトレーシング処理」改良の歴史をひもとく【Radeon RX 7000シリーズ編】

ITmedia PC USER / 2024年8月23日 20時5分

 レイと直方体との判定は、単純な座標の大小比較の組み合わせで行える。上階層の直方体で衝突しなかったとすれば、その直方体サイズ分だけレイを“ワープ”させられるので、レイを効率よく進められる。同様に「何も存在しない広大な空間」も、この仕組みによって一気に“ワープ”できる。

 極端な例になるが、3Dシーンに半透明の「お化け」がいたとする。正確性を重視するなら、これもレイトレーシング法で正しい描画を行うべきだ。しかし、開発実務の都合から「どうせ、お化けの実体像は今までの『ラスタライズ法』で描画するし、半透明のキャラクターなんて周囲に及ぼす間接光や透過光、遮蔽(しゃへい)の影響は少ないから、無視しよう。よってお化けはレイトレーシングによる描画対象としない」という判断がなされる可能性もある。

 この判断が下された場合、Ray Flagを駆使することでお化けを囲むAABBを無視したり、レイの衝突判定から“除外”したりできる。RDNA 3では、このRay Flagの判定をハードウェアで行える拡張を施して効率を高めたというわけだ。

 GeForce RTX 40シリーズのOMEでは、ポリゴンに貼り付けられたテクスチャーの内容も吟味するような、高度な衝突判定を行う仕組みが実装された。それに対して、RDNA 3におけるRay Flagはそこまで踏み込んだ実装とはなっていない。

 しかし、実装が高度であるがゆえに、GeForce RTX 40シリーズのOMEは現状の「DirectX Raytracing」からは利用できず、NVIDIA独自の拡張APIを介して利用しなければなならない。その点、RDNA 3のRay FlagはDirectX Raytracingを使っていれば、既存ゲームでもその恩恵にあずかれるという点が大きなアドバンテージとなる。

 わざわざ最適化をしなくても、レイトレ対応ゲームが高速化されるということだ。

改良ポイント2:ハードウェアによるBVHのソーティング

 2つ目の改良ポイントは、BVHに対するレイ探索に2つの新バリエーションが加わったことだ。もう少し具体的にいうと、「レイトレーシング法で描画するテーマ」ごとに、BVH内にあるAABB(直方体)の順序をハードウェアベースで並べ替える「ハードウェアによるBVHのソーティング」機能が追加されている。

 「放ったレイが、3DシーンにおけるどのAABBに衝突するか?」という探索工程は、実務に置き換えると「グラフィックスメモリ上に記録されたデータ列を探索する」という作業ともいえる。そこでAMDは「なら、そのデータ(AABB)の順番を、レイトレーシングの活用目的に応じて並べ替えれば、効率の改善につながるのでは?」と考え、RTユニットにハードウェアとして実装したのだ。

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