[細川珠生]【ホルムズより尖閣諸島、現実的議論を】~安保法制、民主大野元裕議員に聞く~
Japan In-depth / 2015年5月31日 15時0分
集団的自衛権の行使を可能にするための安保法制が提出され、いよいよ国会審議が始まる。中東情勢に詳しい参議院議員の大野元裕氏を招き、不安定な中東情勢に、今後日本がどのように対応していくべきかを考える。
イエメン情勢が非常に不安定だが、何が起こっているのか。大野氏は、「スンニ派の盟主を標榜するサウジアラビアと、シーア派の盟主を標榜するイランが代理戦争をイエメンで行っている」と現在の状況を説明した。イラク戦争やアラブの春以降、中東においてシーア派の力が増している。イラクもスンニ派からシーア派に政権が代わり、シリアにおいてもスンニ派の力が封じ込まれている。「イエメンのサーレハというスンニ派の大統領が亡命して以来、イエメンは非常に不安定になっていた」と今回の背景について大野氏は分析した。
オバマ大統領は、アラブの6カ国の首脳と会談する予定であったが、実際出席したのは2カ国だけだった。「他の中東の国がオバマの調整能力を疑っているのではないか」と細川氏は指摘した。大野氏は、オバマ政権が中東から撤退路線をとっていることから、「イエメンを安定させたいと思う人たちから見れば、アメリカの言うことは信用できない。かつてほど頼りにならない。その一方でイランやシリアなどと話をしようとしているアメリカへの不満を表明している」と話し、この状況を「国際情勢を反映した縮図が中東にある」と表現した。
そのような中東情勢の中で、アメリカと日本の関係を考えつつ、安倍総理は機雷の掃海をしようと考えているようだ。大野氏は、日本にとって中東情勢の安定が重要だとしながらも、「一方でホルムズ海峡に機雷が撒かれて、石油の輸入がストップすることが、集団的自衛権の行使に当たるかというと問題がある」と述べた。
安倍首相は、日本の国民の生命や自由が根底から覆される場合には、集団的自衛権を使っていいと主張している。この事例がそれに該当するかということに関し、大野氏は懐疑的だ。戦闘地域での機雷活動を行う能力が日本にあるのか、戦闘が行われておらずに、機雷だけがある場合、それがアメリカを攻撃するためのものと見なして集団的自衛権を行使してよいのか、公海のないホルムズ海峡で他国の領海内に入って掃海を行うことを想定していたのか等という問題点を挙げた。大野氏は、機雷の掃海活動に関しては、日本が集団的自衛権を行使することは「現実的にシナリオとして成立するかというと私は極めて難しいと思う」と述べ、国際社会で一丸となって取り組みを検討すべきであることを示唆した。
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