[相川梨絵]【バヌアツ、国会議員14人に禁固刑】~前代未聞の汚職事件、首相不信任の動きも~
Japan In-depth / 2015年10月28日 18時0分
バヌアツ全土が注目している15人の国会議員が起訴された汚職裁判の続報です。
この裁判は、今月12日に14人の有罪が確定しました。しかし、翌日、有罪を言い渡されたペペテ大統領代理が、ロンスデール大統領の外遊中に自らを含めた14人全員の恩赦の手続きをしてしまい、大きな混乱を招きました。
その後すぐ帰国したロンスデール大統領は、このような事態になってしまった事を国民のみならず、全世界に謝罪し、すぐに憲法と照らし合わせて法的な処置をすると声明を出しました。
大きく動いたのは、16日の朝でした。前日、密かにロンスデール大統領の恩赦撤回のサインが通り、16日午前ペペテ大統領代理と10名の有罪者、共犯者として彼らの3名の弁護士が逮捕されました。同じく有罪を言い渡され、ペペテ氏によって恩赦を受けたモアナ副首相、ステーブン・カルサカウ議員、セージ・ホコー外務大臣、ウィリー・ジミー財務大臣に関しては、今回の逮捕から除外されました。このニュースを聞きつけ、300人以上のバヌアツ国民が、彼らが収容されている重罪犯用の刑務所へ駆けつけました。国民の関心の高さが伺えます。また、この逮捕を受けて、サトー・キルマン首相が国土大臣、公益事業大臣、教育大臣、気象大臣を更迭しています。
そして、二転三転して迎えた22日、汚職事件の被告人15名の量刑が発表されました。【14人に禁固刑】
賄賂を渡したモアナ副首相は4年、トニー・ナリ公益事業大臣は3年6ヶ月、その他12人は3年の懲役が言い渡されました。バヌアツの法律で、2年以上刑務所にいた者は政界復帰できないので、事実上の政界引退も勧告されました。また、唯一、裁判で有罪を認めたウィリー・ジミー財務大臣は、執行猶予が認められ20ヶ月の刑となりました。裁判官は、ウィリー・ジミーに対して、政界復帰の可能性を残した事になります。
判決に対して、多くの国民は少なすぎると不満に思っています。しかし「14人が入るのは、重罪犯用の刑務所。他の受刑者が彼らをぼこぼこにしてくれるよ。」となんとも恐ろしいことを話してくれました。
ここ数日、ざわめいていたバヌアツ国民もこれで、ひとまず落ち着きそうです。
しかし、5人の大臣を失った政界は、そうはいきません。逮捕された議員の多くは、キルマン首相が率いる党の出身者。現在、キルマン首相不信任の動きが大きくなっています。これに対して、キルマン首相は、空いた大臣のポストに他の政党の議員を任命することで乗り切ろうとしています。
今度、どのように政界が動いて行くのでしょうか?また、今回の賄賂は、海外マネーなのではないか、サイクロンパムの義援金が使われたのではないかなど、様々な憶測が飛んでいます。無欲の国民に対して、なんともどろどろの政界。
今回の裁判をきっかけに、バヌアツ本来の正義を取り戻すのでしょうか。
※トップ画像:地元紙 Daily Post の一面 ©Daily Post
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