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【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その1】~「戦争ごっこ」レベルの第一線救護~

Japan In-depth / 2016年1月8日 7時0分

「検討会では自衛隊の医官はオブザーバーとして座っているだけで、自ら拡充を訴えることをしない。私が『もっと隊員の命を救える体制を整えるべきだ』と言えば後ろからついては来ますが、自ら道を切り拓こうとしない。これでは何のために防衛医科大学を出て医者になったのかわかりません」


防衛省の審議会や検討会の座長がそのテーマについて、雑誌において政府批判ととれる論を興すというのは極めて異例である。少なくとも筆者はその前例を寡聞にして知らない。それだけ佐々木氏が防衛省側のやる気の無さに憤慨していた、ということだ。防衛省の衛生関係者が真摯な態度で会合に望んでいるならば、佐々木氏はこのような論文を世に出すことはなかったはずだ。


筆者は陸自の個人携行救急品が国際貢献用と国内用と分かれており、国内用は極めて貧弱である事実をスクープした。国際貢献用のキットが8アイテム、対して国内用は3アイテムにすぎない(ポーチ含む)。これでは第二次大戦当時と大きく変わらない。国際用のキットも米軍など諸外国のものから比べると大きく劣っている。


筆者は東洋経済オンラインに掲載された2014年9月17日の『戦傷者は「想定外」という、自衛隊の平和ボケ』以来、ファースト・エイド・キットの不備に焦点を当てて、1年以上もの間、自衛隊衛生の不備について警鐘を鳴らし続けてきた。


これに対して陸幕衛生部は「国際、国内の区別は無く、有事の際は国内用の中身を補充する」と回答した。しかし、実は備蓄があるわけではなく、民間在庫に頼るという。だが当の業者に聞いても「そんな話は初めて聞きました。」という反応ばかりだ。包帯も止血帯も輸入品であり、使用期限があるものなので、業者は売れるか売れないか分からない商品の在庫を潤沢に抱えることはしない。


在庫が無ければ有事の供給は期待できない。現実には陸自は有事に国内用のキットを国外用と同等に補充することはできないのだ。つまり陸自の衛生部は苦し紛れの言い逃れをしたことになる。その現実不可能な「言い逃れ」をあたかも可能であるかのように、大臣や陸幕長に答弁させたのだ。率直に申せば嘘をついたのだ。そのような組織を納税者が信用できるだろうか。


(【納税者も驚愕、陸自衛生学校体育館狂騒曲 その2】~最前線で隊員の命を救えるか?~
に続く。本シリーズ全5回)


トップ画像:装甲救急車(左)からおろされた負傷者に治療を受ける前の記録を行なう米軍衛生兵:提供 U.S.ARMY

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