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防衛省行政事業レビューは信用できない その2

Japan In-depth / 2016年7月5日 0時0分

防衛省行政事業レビューは信用できない その2

清谷信一(軍事ジャーナリスト)

陸自衛生部は単に筆者の報道で国内用セットが貧弱であることが露呈し、その弥縫策で「思いつき」を述べたのではないだろうか。担当者の思いつきや「頭のなかの計画」を防衛省や自衛隊では「計画」というのだろうか。岩田陸幕長や中谷大臣はこの衛生部の作った資料を元に筆者の記者会見での質問に関して「有事には国内用セットにアイテムを補充し、海外用と同等とする」と記者会見で発言している。

これら大臣や陸幕長の発言は防衛省自衛隊の公式見解として受け取られる。存在しない計画を存在すると組織のトップに報告し、それをトップが国民に対してそのように説明することはトップだけではなく、国会議員や納税者をも欺くことになる。それは文民統制への挑戦である。

組織のトップを欺くことは本来担当者のモラルはもちろん、反逆行為として責任が厳しく問われて当然である。懲戒処分が相応の行為だと思うが、防衛省では処罰もされず、このような行政レビューの有識者向けの資料にも「計画」として記載されている。防衛省は当事者能力を本当に有しているか疑わしい。

資料は「陸上自衛隊と米陸軍の個人携行救急品については、同等な部分はあるが、品目及び数量ともに少ない状況である」と陸自キットの不十分さを認めている。また表の中で各アイテムについても、一部機能あるいは数量的に不足であると認めている。

これを事実と認めたことは進歩ではある。だが昨年の記者会見で岩田陸幕長は筆者の質問に答えて「『個人携行救急品』は米軍等の装備も参考に定めており、米陸軍の同装備と概ね同様の内容品であり、著しく劣っているとの指摘は当たらないと認識している」と述べ、中谷大臣も同様の回答を行っている。つまり防衛省の公式見解が180度変化したことになる。陸幕長や大臣の認識は誤っていたのか、それとも認識を変えたのかを防衛省は説明すべきである。

▲表②

この資料の記述には理解不足からか、根本的な間違いや矛盾が散見される。特に、日米の救急セットを比較した表②について、IFAKは比較の対象そのものを間違えている。表②で示されているJFAK(統合型個人救急品)とは、米空軍のものである。航空機搭乗員用サバイバルキットの救急品、地上整備員用救急品、救出部隊用救急品、機体備付救急品を統合したものであるから、米陸軍のIFAKⅡとは、装備目的も運用も異なる。比較対象そのものを間違えているのだ。

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