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一触即発の大乱危機

Japan In-depth / 2016年7月20日 18時58分

一触即発の大乱危機

嶌信彦(ジャーナリスト)

「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」

世界各国でその国が持っていた社会常識、倫理感などが次々と崩れるような事件が相次いでいる。日本では70-80歳台などの老人や年上の女性が20-30代の若者、青年に殺害される事件が目立ってきた。かつては尊属事件などで、若者が年配者を殺傷する事例はあったが、最近のように動機も刹那的で見知らぬ人を殺傷に及ぶことはほとんどなかったように思う。

イギリスでは、まさかとみられていたEU離脱を国民投票で決めてしまった。離脱を決めてから慌ててイギリスに不利となる貿易などのEU条件は適用しないで欲しいと言い出している。イタリア人は駆け出した後で考える国民性を持つが、イギリス人は歩きながら考えるといわれていた。なのに後先の損失を考えず大衆心理に乗ってしまったかのような今回のEU離脱決断は、考え深いとされたイギリスの国民性に似合わない。

アメリカでは、融和が進んでいるようにみえた白人と黒人の分断図が再び鮮明になっている。発端は白人警官が、身分証を出そうとした黒人をいきなり射殺した事から始まった。この行為に反発するデモが全米で起こったが、今度は「白人が憎い」と黒人が白人警官数人を射殺、黒人と白人の衝突が全米各地で発生した。すると白人警察官は、無人ロボットを使って取り締まりに乗り出したという。オバマ大統領は「刑事司法制度の中にまだ人種差別が残っているのではないか」と述べている。

イラクのバグダットでは一度に約300人が死亡する爆弾テロが発生、一回のテロで犠牲となる人々の数がウナギ上りに増えている。中東や西南アジアでは爆弾テロによる死傷者数に鈍感になっているようだ。イラク戦争、アフガン戦争、イスラム国のテロなどが相次いで発生しているうちに、人命がどんどん軽くなってきたように思う。

中国もまた、南シナ海問題を巡るフィリピンの国際仲裁裁判所への提訴に対し、前政権で外交トップだった戴秉国(たいへいこく)・前国務委員が「仲裁裁判所の判決などただの紙くずだ」と判決前から批判して驚かせた。中国の立場を事前に鮮明したともいえるが、仲裁裁判所の判決は中国側の全面敗訴だった。中国政府要人やメディアは国を挙げて反発し、南シナ海の領有権は昔から中国のものだったとキャンペーンを繰り返している。

ただ、中国は一方で国際的価値基準を尊重したいとも言ってきた。中国は太平洋進出に関しては一切妥協しない姿勢を示し続けているが、6月の中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相会議でも王毅外相が仲裁裁判所の判断は無視するとの根回しを行ない、カンボジア、タイ、ラオス、ブルネイなどが中国支援にまわりASEANの分断化が事実上明らかになっている。中国は今後も、同じ調子でアジアの分断化を図ってゆくつもりなのだろうか。しかし、カネと力づくで国を抑え込もうとしても、その試みはいずれ失敗しよう。

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