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自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その1 情報編

Japan In-depth / 2016年11月1日 18時0分

 演習をそつなくこなすことや、災害救助こそが自衛隊の任務であり、自衛隊に実戦を想定した用意も訓練もしてこなかった。演習では敵弾は飛んでこないし、敵弾によって命や手足を失うことはない。このため自衛隊は営々と戦闘機や戦車など軍隊らしく見える「見栄えのいい道具」を買うことだけを目的とし、その運用や実戦での使用を考えてこなかった。率直に申し上げれば自衛隊は「軍隊のフリをしていれば良い組織」なのだ。

 かつて、防衛庁の天皇と呼ばれた内局官僚で、後に評論家に転じた故海原治氏は、この点を厳しく指摘してきた。海原氏は30年、40年も前に自衛隊は実戦を全く想定していない組織であると指摘していたが、その実態は全く変わっていない。

 戦死者、戦傷者が出ることを全く想定していないので、ピカピカの戦闘機や戦車は過分に欲しがるが、兵站や基地の防御、戦傷治療、通信、情報といった「裏方」にはカネをケチってきてまともなシステムを構築してこなかった。そもそもそういうものが必要だという認識がない。

 多くの国民が誤解しているが良くも悪くも自衛隊は軍隊ではない。元気のいい保守派の政治家や、「論客」の皆さんが信じている「精強たる自衛隊」はイリュージョンでしかない。

 そのような誤解が蔓延している一因は記者クラブという制度にある。記者クラブ会員の記者は軍事に明るい専門の記者ではなく、比較的若手がローテーションで当てられているだけだ。このため先端の軍事術は勿論、軍事に関する世界情勢は勿論、専門的な知見が無い。 だから防衛予算について、具体的な質問ができないし、するつもりもない。

 しかも彼らが独占する記者会見では大臣や幕僚長が困るような具体的な予算に関わるような質問はしない。筆者から見ると馴れ合いにしか見えない。つまり素人が当局と馴れ合っている状態だ。そしてその情報源は内局や幕僚監部からの説明であり、彼らの説明が本当かどうかも検証する能力がない。また諸外国の実態を取材もしていないで海外の軍隊と自衛隊を比較することもできないので「大本営発表」を鵜呑みにする。

 そのマスメディアが自衛隊精強の虚像を垂れ流し続けてきた。このため多くの国民が自衛隊は精強だと誤解している。だがその実態は大規模な戦争はもちろん、駆けつけ警護ですら満足に行える実態はない。敢えて誤解を恐れずにいえば自衛隊ができるのは戦争ごっこであり、実戦ではない。

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