自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その2 火力編
Japan In-depth / 2016年11月7日 23時0分
また機銃も同様にレールマウントを装備し、光学照準器や暗視装置、レーザー測距儀などが併用される。小銃より射程が長い機銃にこれらの装備が搭載されれば、特に夜間に効果的な射撃が可能であるが、これまた自衛隊には存在しない。このため照準装置においても、現地の武装勢力に対して優位を確保できない。
12.7ミリ弾など大型の弾を使用する対物ライフルは近年採用する軍隊が増えているが、この弾薬は低伸弾道、すなわち、弾丸が飛翔する際に描く放物線が直線に近いので、狙撃手を養成する期間を短くできる。遠距離狙撃だけでなく、バリケードや装甲車両などを排除するため用いられ、市街戦でも威力を発揮する。例えばドイツ軍では米国製で、12.7ミリ弾を使用するバーレットM82をG82として採用している。このような狙撃銃もまた陸自では採用していない。
陸自部隊が携行できる火器で威力が高いのは84ミリ無反動砲程度であり、これは多くの国々でも使用されている。だがこれも南スーダンには持ち込んでいない。武装勢力は一般にRPGと呼ばれる、携行型のロケット榴弾を多用しているので、火力は陸自部隊よりも遥かに高いといえよう。
これらのことから、陸自南スーダン派遣部隊の装備火器は諸外国や武装勢力からみても火力は弱く、正確な照準がつけ難い。また照明弾や煙幕弾を使用できないために、味方の位置を秘匿したり、夜間に敵の位置を確認したりすることが困難である。他国の軍隊、あるいは武装勢力と戦った場合に同等の規模の戦闘を行った場合に、より大きな犠牲を出す可能性が高い。陸自の普通科は昭和の時代から取り残されている。当然ながら現代的な装備を持った他国の軍隊と比べて被害が出る確率はどうしても高くなる。
また非致死性および、弱致死性兵器を殆ど有しておらず、また暴徒鎮圧も訓練も殆ど積んでいない。また暴徒鎮圧時に身を守るすね当てや、肩当て、ヘルメット用のバイザーなどのプロテクターも装備しておらず、投石などで思わぬ被害を出す場合も想定される。現地の暴動は国内のものとは大きく異なる。単なるデモが銃撃戦や本格的な戦闘に発展する可能性も少なくない。
装備や訓練の欠如のために例えば民間人救助作戦において現地住民が暴徒化した場合、任務を放棄して撤退するか、住民に銃口を向けるしか手段がない。つまりグレーゾーンに対処する能力がない。にも関わらず、防衛省は個々の隊員に対する「アリバイ工作用」の個別のビデオカメラだけは装備させようとしている。これは防衛省と政治の責任逃れのための措置としか思えない。
(その3に続く。その1。全5回)
トップ画像:陸自のMINIMI。©清谷信一 (MNIMIでは7.62ミリ弾の機銃に勝てない。)
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