【大予測:東南アジア】覇権狙う中国、鍵はインドネシア
Japan In-depth / 2016年12月30日 17時40分
大塚智彦(Pan Asia News 記者)
「大塚智彦の東南アジア万華鏡」
2017年の東南アジア各国は良くも悪くも1月に誕生するトランプ米新政権の予測困難な外交・経済政策、西太平洋軍事戦略の影響を受けることは必至で、トランプ新政権と対決姿勢を強める可能性の高い中国・習近平政権という2大大国のパワーバランスに翻弄されるのか、毅然と立ち向かうのか、その存在感を問われる1年になりそうだ。
オバマ政権ともっと対決し姿勢を明確にした東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国はドゥテルテ大統領のフィリピンだ。オバマ大統領を「売春婦の息子」呼ばわりするなどの数々の暴言で首脳会談は流れ、米国との長年の同盟関係に陰りも生じようとしている。
その間隙を突く形で急接近したのが中国で、南シナ海・南沙諸島の領有権問題での対立を「経済援助による棚上げ」という玉虫色の妥協で当面回避することに成功した。トランプ政権が南シナ海問題に加えて国際社会から批判が高まっているフィリピンの「麻薬犯罪容疑者への殺害を含む強硬策」などでドゥテルテ大統領に批判的姿勢を示せば、フィリピンという対中国で橋頭保のような重要な同盟国の中国寄りは一層明確になるだろう。
■米中草刈り場に日本は独自の外交を
同様に米中の権益、軍事面でのパワーバランスで「草刈り場」になりかねないのがアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相のミャンマーだ。民主化実現後は中国離れ、米接近政策で米国からの経済制裁解除に漕ぎつけたスー・チーさんだが、頭の痛い国内問題を抱えている。少数イスラム教徒ロヒンギャ族問題で、国軍による深刻な人権侵害が国際社会そしてASEAN内部からの批判を招きながらも、国軍や多数を占める仏教徒の支持基盤を失いたくないという政治的配慮から対応に手をこまねいているのがスー・チー政権の現状。そこに虎視眈々と支援の手を差し伸べて「自陣営への抱き込みを狙う中国」という構図は、ある意味フィリピンと同様だ。
この2国が親米、親中どちらの路線に本格的に舵を切るかでASEAN内のバランス、さらに日本との関係にも影響を及ぼすことは確実といえる。そのため日本としては行き先不透明(東南アジア外交に関して)のトランプ政権の出方を単に注視するだけでなく、積極的な介入・支援で独自のパイプ、ホットラインを再構築する積極外交が求められるだろう。
■服喪のタイ、レイムダックのマレーシア
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