【大予測:米露関係】サイバー戦激化、日本も対策急げ
Japan In-depth / 2016年12月31日 15時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
ウラジーミル・プーチン率いるロシアの諜報機関が11月のアメリカの大統領選挙に介入したというのがCIA、FBI、国土安全保障省(DHS)等、米当局の一致した見解だ。いくらプーチン本人が知らぬ存ぜぬで通そうが、オリンピック選手のドーピング同様、これだけ大規模な国際法違反行為が国のトップの指令なしに行われるわけがない。例外的に今回のサイバー攻撃を調査した報告書が一般公開され、それを見ると「グリズリー・ステップ」と銘打ったハッキングの実態が明かされている。
残りの任期が3週間となったバラク・オバマ大統領は、その特命により、ロシアの駐米外交官を35人国外通報、米国内のデータ収集機関2ヶ所を閉鎖した。プーチン側も早速この措置に抗議し、反撃に出ると発表。今回の大統領選挙結果に暗い影を投げかけたままサイバー戦争が始まっていることを感じさせた。
これに対するドナルド・トランプ次期大統領の反応は「本当にロシアが民主党委員会のコンピューターハッキングに関わっていたのか証拠がないのでわからない」「そんなことに構っている場合ではない」と主張し、年が明けてからのらりくらりと参謀と相談するとだけ記者団に告げた。
オバマ大統領は対ロシアの措置を発表するスピーチの中で、ロシアの他の国々に対する同様のスパイ行動が懸念されていると言及したが、これはドイツやフランスを指していると考えられ、今後ヨーロッパでもポピュリズムが台頭し、人種差別的な極右政権が誕生する可能性があり、ロシア政府の命を受けたハッカーが既に暗躍していると言っていいだろう。
そんな状況で、相変わらず「蚊帳の外」に置かれているのが日本の外交だ。トランプ当選直後にゴルフ用品を抱えてトランプ・タワー詣ででご機嫌伺いに行き、その場にトランプの娘夫婦が列席するという異常事態に文句の一つも言わず、よろしく批准をお願いしたであろう環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をあっさり帰国後に否定された。プーチンに対しても北方2島返還の話もソデにされた。 総理大臣がハワイの真珠湾で戦没者への追悼スピーチをしたことも、米国内では大したニュースにはならなかった。
それでも首脳サミットに日本の代表が呼ばれてきたのは、アメリカという頼れるアニキの弟分としてであって、来年からその「アニキ」は、アメリカ史上最も、政治家としての経験がなく、支持率や信頼度が低く、無知無教養で女性や異教徒を蔑み、マクロの軍事政治経済に疎いトランプ大統領が率いるホワイトハウスになる。申し訳ないが何が起こるといった具体的な予測は何一つできない。ただ、これまで考えもつかなかったような最悪の事態を常に想定してもまだ足りないだろう。加えて、サイバー戦争は目に見えにくい、ニュースになりにくいという難点がある。
先進国の中でも日本の若者はいちばんコンピューターが使えないという調査結果が何度も出ている。平和を大事にしたいという気持ちがあるのなら、何かしらの対策を講じなければサイバー戦争でこの国に勝ち目はないということだけは確かだ。
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