金正恩、韓国大統領選に活路
Japan In-depth / 2017年3月4日 18時0分
Japan In-depth 編集部(坪井映里香)
【まとめ】
・「枝削ぎ論」で消された「知りすぎた男」正男氏
・孤立深まり韓国野党政権誕に突破口求める北朝鮮
・金正恩委員長を「人道に対する罪」で訴追を
2月13日のマレーシア、クアラルンプール国際空港。北朝鮮の独裁者、金正恩委員長の異母兄である金正男氏が殺害された。世界中に衝撃が走ったこの事件。一体なぜ彼が殺害されたのか。金正恩体制へどのような影響があるのか。アメリカ、韓国、中国、東南アジア諸国と北朝鮮の今後、そして日本はどう対応すべきなのか。3月2日、朝鮮情勢分析の第一人者、朴斗鎮氏を講師に迎え、Japan In-depthセミナー「衝撃!金正男暗殺 半島情勢最新分析」が東京・千代田区の日本記者クラブで行われた。
■「枝削ぎ論」で排除された金正男氏
金正男氏の遺体からVXガスが検出されたことから、北朝鮮の国家犯罪だということがほぼ確定した、とした上で、ではなぜ国家ぐるみで正男氏を殺害したのか、その動機について、朴氏はまず北朝鮮の特異な統治体制に言及した。もともと祖父の故金日成主席はスターリンの独裁システムを取り入れていたが、父金正日はそれにナチスなどあらゆる独裁システムを付加して指導者を絶対化する「首領独裁体制」を築き上げた。
この体制では指導者一人を絶対化するために、その兄弟・肉親を排除する「枝削ぎ論」と呼ばれる「統治論」がある。金正恩委員長ももちろんこの「統治論」を踏襲している。それは「枝葉があれば栄養が行かないから幹が大きくならない」という説明がなされている。「これが適用されることによって金正男氏は除去される運命にあった」と指摘した。
「枝削ぎ論」は、自身に権力を集中させることが目的であるため、金正日時代には排除といっても政治力を排す、つまり政治生命を絶つことにとどめ、命までとることはなかった。それが金正日の「枝削ぎ論」であった。だが、「金正恩はその枠から完全にはみ出て2人(※義理の叔父・張成沢氏と兄・金正男氏)も親族を殺し、叔母の金慶喜の政治生命まで奪った。もしかしたら命まで奪っているかもしれない」と朴氏は金正恩委員長が父金正日の路線から完全に逸脱していると指摘した。
■金正恩は「パラノイア」
では、故金正日総書記その息子、金正恩委員長の違いはなんなのか。それは金委員長の抱えるパラノイア的性格(※偏執病、妄想性パーソナリティ障害の一種)が関係していると朴氏は指摘、その上でこの性格が今回の「金正男暗殺」に大きく影響していると分析し、このパラノイア的性格の根底には「劣等感が潜んでいる」とした。
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