デパート混迷 伊勢丹社長突然辞任
Japan In-depth / 2017年4月20日 1時19分
嶌信彦(ジャーナリスト)
「嶌信彦の鳥・虫・歴史の目」
【まとめ】
・もはや“消費の憧れ”ではないデパート
・三越伊勢丹HD大西社長は時代の寵児、のち解任。
・デパートは次のビジネスモデル見出せず。
1967年3月に大学を卒業し、私は最初の赴任地・秋田県に向かった。当時の秋田はコメ所として知られ、八郎潟の拓に手をつけており東北ではコメの産地として比較的豊かな県だった。県庁所在地の秋田市には、「木内」「本金」という二つのデパートがあり秋田市のランドマーク的存在だった。
60年代の地方の中核都市には、大体地元資本のデパートがあり、デパートで買い物をするということは、東京でいえば三越や高島屋、伊勢丹へ行くといった感じで特別な気分になったものだ。デパートは百貨店とも呼ばれ、それこそ靴から化粧品、洋服、電気製品、スポーツ用品、食料品、文具などあらゆるものを取り揃えていた。何でもあるので“百貨”店と呼ばれていたのだろう。
■“百貨”店から“50貨”店へ
だがデパート、百貨店は80年代頃から特別な存在ではなくなってきた。特に東京などの大都市では、化粧品、洋服、スポーツ用品などの専門店、外資系のブランドショップが次々と繁華街に専門店を出し、消費者はそちらへ足を運ぶようになった。その結果、デパートは高級品や特別な品を買う店ではなくなっていったのである。
同時に、売場から電気製品やスポーツ用品、文具などは消えて“百貨”を売る店から50貨、60貨の店になっていった。衣料品ではユニクロが全国に店を出し、化粧品は目抜き通りに外資系が軒を並べ始めた。スポーツ用品ではミズノやナイキ、眼鏡などもお洒落な品ぞろえの専門店があちこちに出始めた。さらに、ここ10年では通信販売で簡単に高級品や地方の特産品が手に入るようになってきたため、かつては消費の憧れの場所が普通の店になってきてしまったのだ。
■デパ地下、安売り、福袋の限界
いまやデパートの最大の売り場は“デパ地下”と呼ばれる食料品売場と、年に何回か行われる大安売り、正月の福袋などに狭まってきてしまった。この結果、デパートの売上げはどこも減少し始め、経営が行き詰まったり、支店を次々と閉鎖するところが増えている。地方では量販店と通信販売に押され、かつての街のランドマークだったデパートが消えてしまった都市も少なくない。
そんなデパート戦争の中でひときわ存在感を示していたのが東京・新宿の伊勢丹だった。若者向けの衣料品、ファッション製品を取り揃え一人気を吐いていたのだ。特に業界をあっと驚かせたのは2008年の伊勢丹と老舗中の老舗で、百貨店・デパートの代名詞ともなっていた三越との経営統合だった。世界最大の売上高を誇っていた新宿本店を持つ伊勢丹と富裕層の客を抱える老舗三越の経営統合は百貨店の新たな方向を示すものとして注目された。
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