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インドネシア社会に激震「アホック現象」

Japan In-depth / 2017年5月18日 0時14分

インドネシア社会に激震「アホック現象」

大塚智彦(Pan Asia News 記者)

「大塚智彦の東南アジア万華鏡」

【まとめ】

・有罪判決受けたアホックジャカルタ知事の釈放訴える声高まる。

・背後に野党「グリンドラ党」党首プラボウォ氏の影。

・「アホック現象」踏まえ国民が一つにまとまるかが今後の焦点。

 

■「アホック現象」の盛り上がり

インドネシアの新聞、テレビは連日のように有罪判決が下され収監されたジャカルタ特別州のバスキ・チャハヤ・プルナマ前知事(通称アホック)の動静と「釈放」を訴える支持者の動きを詳しく伝えている。

「アホックを解放せよ」「アホックに公正な裁判を」「アホックは英雄だ」などと書かれたプラカードを掲げ、ロウソクを手に愛国歌などを歌う人々の輪は首都ジャカルタに留まらず、スマトラ島、カリマンタン島、スラウェシ島、パプアと全国津々浦々に拡大、「アホック現象」として各都市で「釈放と公正な裁判」を求める運動に発展、盛り上がりをみせている。さらにオランダ、アメリカ、オーストラリアなど海外在住インドネシア人をも巻き込んでさらに拡大しつつある。

5月9日、北ジャカルタ地裁はアホック知事に対し、宗教冒涜罪と公共の場での憎悪表現(選挙運動の集会で『イスラム教徒は異教徒を指導者にできない』とのコーランの一節を引用した)の罪で「禁固2年、即時収監」の判決を言い渡した。これは検察側が論告求刑で「宗教冒涜罪」を取り下げ、「禁固1年執行猶予2年」を求刑したのを上回る重い判決。求刑以上の判決、検察が取り下げた「宗教冒涜罪」を判決では適用、という2点で判決の妥当性に疑問が投げかけられている。

アホック知事は即日控訴をするものの、裁判所から直接チピナン拘置所に収監され、翌10日朝には治安上の理由として南ジャカルタの国家警察機動隊本部に移送された。支援者はチピナン拘置所、そして機動隊本部前にも押しかけ「声よ届け」とばかりに祈りの歌を深夜まで熱唱。これをニュースで知った全国の支持者、ファンが各地で平和的に支援運動を繰り広げる事態になっているのだ。

 

■「雰囲気と状況」のプレッシャー

こうした動きに外交専門家、宗教家、政治評論家などがテレビに出演しては事態を読み解くためにあれこれ解説を試みているが、いずれも「隔靴掻痒」の感をぬぐえない。

それはなぜか。判決直後にジョコ・ウィドド大統領が「司法の手続きを尊重するように。政府は法手続きに介入しない」と図らずも明言したように、独立した司法権への介入、批判を許さない雰囲気、そしてアホック前知事のようにイスラム教への言及がイスラム急進派に「宗教冒涜だ」と指弾されることを回避しようとする状況がインドネシア社会に静かにしかし確実に醸成されているからだ。

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