海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その3
Japan In-depth / 2017年6月25日 8時0分
このような内局の主張は航空会社が東京から欧州までの路線の機体を選ぶのに、直行できるB777やA350のような機体ではなく、単に安いからと航続距離がないMRJのようなリージョナルジェットを選ぶようなものだ。
単にコストが安だけでいいのであれば、海自が練習ヘリとして採用しているエアバスヘリのTH-135の方がUH-60系列の10分の1以下の値段で調達が可能である。ライセンス国産では無いが、既に海自が導入している機体であり、訓練や兵站上問題あるまい。双発で海上航行も問題ない。民間でも採用されているために、エアバスヘリの神戸の整備工場で整備が可能である。
繰り返すが本来の目的に対してはMCH-101の方が遥かに合致している。既に掃海・輸送ヘリとして採用された機体であり、既に国内で整備の体制も整っている。だがMCH-101の調達数はわずか10機(計画から1機削減)に過ぎず、南極観測用に調達された多用機CH-101の3機を加えても13機に過ぎない。このため訓練や維持コストが高くなりがちで、稼働率が低めである。更には乗員のローテーションが難しい、MCH-101から他のヘリに異動するならば機種転換が必要だ。
新型ヘリがMCH-101になれば既存機と併せて28機となり、訓練やローテーションの効率がかなり上がる。そうなれば一機あたりの維持・運用費も大幅に下がることが期待できる。逆にこの調達でSH-60系列の機体が選ばれると、海自の作戦用ヘリは殆どSH-60系列になり、SH-60系列で何らかのトラブルがあれば、全てが地上待機となる恐れもある。またパイロットや整備員の移動ローテーションにも支障がでる。これらの点からもMCH-101を選択する方が合理的であると言える。
コストが問題ならば、101を輸入すれば良いだけの話だ。そもそもMCH-101は当初の計画がわずか13機の調達に過ぎない。これをライセンス生産すれば当然コストは馬鹿高くなる。その「ライセンス生産」の実態は殆どのコンポーネントを輸入して組み立てただけの「組み立て生産」に過ぎない。技術移転のメリットもない。それで調達単価は2倍に跳ね上がっている。単に川崎重工にカネ落とすためだけに国内生産が採用されたのだ。
しかも採用時には国内生産の方が、輸入よりも安いという事実に反する見積もりが提案されている。そうであれば、101を輸入に切り替えても何の問題もないだろう。その場合、調達単価は国産の60Kベースの機体を遙かに下回る価格になる。どうしても川崎重工に仕事を落としたいならば、単に一機あたり只で10億円でもくれてやればいいだろう。それでも川重で生産するよりも遙かに安く上がる。
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