海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その3
Japan In-depth / 2017年6月25日 8時0分
更に申せば、将来の護衛艦隊の早期警戒ヘリとして使用も考えればMCH-101が有利だ。護衛艦隊が南シナ海など本土から離れて活動する場合、空自の早期警戒管制機、E767AWACSや早期警戒機E-2C、E-2Dなどの支援は受けられず、自前の早期警戒ヘリを持つ必要がある。
その場合、現在する唯一の選択は英海軍が新型空母クイーン・エリザベス」用に採用した航空機搭載型早期警戒(AEW)システム、「CERBERUS(サーベランス)」だけだ。これは英海軍が運用するMCH-101の同型機であるAW101/HM.2ヘリコプターに搭載、運用される。
空母以外の海上戦闘艦によって編成される艦隊の弱点は早期警戒にある。艦隊の防空のためには、できるだけ早く敵の航空機やミサイルなどの探知が必要だ。だが艦載レーダーの電波は直進するので、いくら優秀でも水平線より下の範囲は、原理上探知できないこのため特に低空で接近してくる対艦ミサイルや巡航ミサイルが接近してくるまで探知できず、対処時間が極めて限られてしまう。特にロシアや中国では超音速の対艦ミサイルを運用しており、西側の主力である亜音速の対艦ミサイルよりも速度が早い。
護衛艦隊が早期警戒ヘリを持つ意義は大きい。現在海自では早期警戒ヘリを調達する予定はないが、将来を考えれば必要なことは間違いない。実際問題として空自のAWACSやE-3C、E-2Dは戦時においては、空自戦闘機の支援で手一杯で護衛艦隊まで手が回らないだろう。早期警戒ヘリの導入は焦眉の急の課題である。だがUH-60系列の機体はそれに適さない。
当時防衛省はオスプレイやグローバルホークといった高価なアメリカ製兵器をろくな調査もせずに次々に承認し予算化している。これらの米国製装備は防衛省や自衛隊が進んで導入したものでなく、官邸主導で政治決定されたものであるとされている。内局官僚たちは官邸の意向を「忖度」し、その調達予算をやりくりするために、海自の多用途ヘリを「生贄」として調達コストの低減を図ったのではないだろうか。
だがこれらの米国製兵器の「お買い物」は調達コストも高いだけではなく、自衛隊での運用に合致しているかどうかも怪しく、その運用も極めて大きな経費がかかり、FMS(米国の有償軍事援助)経由であり、言い値を払わないといけない。防衛省はライフ・サイクル・コストの予測もまともにできていない状態だ。
これが特に今中期防最後の年の防衛予算を圧迫している。昨年度予算の補正予算は大きな金額に膨れ上がったが、需品などの現場では全く予算が回っていないと担当者は嘆いているのが現実だ。また次期中期防以降の固定費が高騰し、今後の自衛隊の装備調達、整備維持体制を大きく歪めた。
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