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海自ヘリ選定巡る下克上と内局 その3

Japan In-depth / 2017年6月25日 8時0分

60K系採用ありきの選定は、「自分たちの『ムラ』の利益のためならば、そのため戦友が死のうが、国防を危うくしても構わない」という、自分たちの利権を優先する海自の回転翼関係者のセクショナリズムに基づく下克上と、現実の運用を無視した内局官僚が建前だけの「競争入札」と調達コストを下げて政治決断された不要なアメリカ製兵器に回そうという、利益の一致による悪しき合作ではないだろうか。

監察本部の監察にも問題がある。始めに「有罪」ありきのよう見える。先述の報告書には以下のようにある。

「機種選定において、検討チーム等が関与していたものの、特定の機種(MCH-101)を、選定されることが望ましい機種として検討し、その他の機種(SH-60K)が評価を満たすことが困難と推定される要求性能へ変更した不適切な行為について深度あるチェックを行うことができない態勢であったことから、内局が運用要求書等の作成や提案書の評価などに、より密接に関与できるよう、機種選定におけるチェック態勢を見直す必要がある」

既に述べたように現実はむしろ、軍事知識と運用に関して無知な内局官僚が、恐らくは首相官邸の意向を忖度して不当な介入を行って調達を歪めたのは明らかだ。にも関わらず、内局の統制を強めろというのだ。

実はこの監察本部の報告書は監察本部ではなく、防衛計画課長が書いたと言われている。それが本当であれば監察本部の独立性が担保されているかどうかも極めて怪しい。防衛省のガバナンスは一体どうなっているのだろうか。

監察本部は検察の出向者で占められており、軍事的な知識が欠けており、手続きが正当か否かだけでしか判断しない。このためそれまでの調達構想や経緯などを理解できないし、全く考慮しない。しかもそれを内局や大臣、副大臣ら政治も、手続き上の問題だとして追認して、この本質を調べようともしなかった。多額の税金が当初と全く異なる目的で浪費されても、それを是としているのだ。何のために防衛省に政治家がいるのだろうか。

かつて民主党政権当時の仙石官房長官が自衛隊を「暴力装置」と発言したために、当時の野党だった自民党がこれを侮蔑だ、左翼用語だと執拗に攻撃し、これに対して仙石氏および民主党は脊髄反射的にこれを陳謝したことがあった。だが軍隊や警察を暴力装置と呼称するのは左翼ばかりではなく、社会学でも使用されている言葉だ。

だが世耕弘成、丸川珠代、佐藤正久氏ら現安倍政権の閣僚などの重職にある諸氏は、「真摯に国防に尽くしている自衛隊を疑うのか、自衛隊の忠誠を疑うのは左翼である」と詰め寄り、自衛隊を信用しろと主張した。

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